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考察:Laboratory Report/第1章 宇宙世紀概要(2)

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第1章 宇宙世紀概要


 1979年に放映が始まったテレビアニメーション「機動戦士ガンダム(以下,ファーストガンダム)」は,日本におけるアニメーション史上に画期的な作品の一つとなった。それには様々な理由があるが,いずれの理由も「ガンダムがヒットした理由」にはなり得るであろう。

 逆に言えば,こういった様々な理由が複合的に重なった結果,「ガンダム」という作品は今日まで続く長期シリーズとなったと言えるだろう。本章では,最初に放映されたファーストガンダムが用いていた架空の暦「宇宙世紀」に関して時代ごとの概要をまとめている。

 なお,以降の本文と註釈で執筆のスタンスが違うので注意していただきたい。(本文は,宇宙世紀の遙か未来に生きる人間として,注釈は我々「ガンダムという作品を見ている者」としてのスタンスでまとめている。)

概要は,PDF版では章頭にのみ記載されるが,Wiki項目では説明の為に各小節ごとに掲載している。


 1-2 地球連邦軍の成立


 西暦1999年に誕生した地球連邦であるが,様々な問題を抱えたままの出発であったことは,先に述べた。特に人口問題の解決を優先した地球連邦政府にとって,様々な民族問題等による妨害(*1)で,立案した移民計画が実行されないことは,事実上その存在意義が問われるに等しいことであったはずである。
 また,実際に様々な地域で宇宙移民に反対する活動が起こっており,そういった組織と,「自らの土地」に拘る民族組織とが結びついて一層の反政府活動が巻き起こった。

 こうした状況の中,連邦政府としてもこれをただ黙ってみていられる状況ではなく,既存の国家の保有する軍を中心(*2)に,新たな軍を編成することとなった。
 こうして,西暦2009年に新規に編成された軍は「地球連邦軍」という大枠でまとめられ,それぞれ陸軍,空軍,海軍,および新たに宇宙軍を加えた4軍が編成され,基本的にはそれぞれの軍が独自に運用されることとなった。

 陸,海,空軍に関しては,基本的に従来の軍運用と変わるところがない編成であり,旧来の国家軍が持っていた装備をそのまま連邦政府所属に移管した形で発足している。
 しかし,宇宙軍に関しては宇宙開発に関わる形で新たに編成される軍であり,また,旧来の国家もそういった形の軍編成を行っていなかったことから,完全に新規の編成が行われている。すなわち,ほぼ全ての装備が新規に開発が行われた形になり,その分投入された予算額も膨大なのもとなったと考えられる。
 筆者の推測ではあるが,こういった形での予算投入が行われたことは,民衆に対しても,宇宙開発が本腰を入れたプランであることを示す格好の材料となったのではないのだろうか。

 当初,陸,海,空軍は,基本的にそれぞれの枠内で反連邦活動の鎮圧を主任務としていたと考えられる。実際,様々なテロ活動や反政府運動は継続して続いており,これに対応する必要性は極めて高かった。20世紀から継続している民族問題は,そのターゲットが複数の目的から「連邦政府ひとつ」に絞れたため,より一層の激しさを増しているものも存在していたためである。
 逆に言えば,守る側(すなわち,連邦政府側)としては,地球における国家の総意としての立場があり,その総意に反対する側に対する対処が苛烈になるのは,ある意味想定できたことではあった。
 しかしながら,この結果がゲリラ活動の長期化を招いたことは間違いなく,後の一年戦争(ジオン独立戦争)において,ジオン公国軍だけではなく,地元の反政府組織の抵抗が,結果的に地球連邦軍の地上における苦戦を生み出した要因の一つとも言えるのである。(*3)

 一方,宇宙軍は設立当初は,その装備や運用体系などは明確な指針はなかった。旧来の宇宙における軍事体系というものは,基本的には衛星を中心とした,いわば「迎撃型」のものにほとんどが集約されてしまっていたためであり,これらを元に,新たな軍事体系を模索することから始まったと考えられる。

 既に西暦1990年代に加速していた民間の宇宙利用と共に軍事利用としての宇宙開発は,従前の「宇宙からの地上監視」という概念から「宇宙における戦闘行動」という概念へと劇的に変化していったと考えられるのである。
 一例を挙げれば,西暦2005年に打ち上げられた太陽光発電衛星の防衛任務があるだろう。太陽光発電衛星は,地上のエネルギー供給を担う重要な施設であり,また,この発電された電力を受信するマイクロウェーブ受信施設もまた重要な施設である。地上の受信施設は,各軍に依頼することはできるだろうが,宇宙における衛星の防衛は宇宙軍の任務として重要なものとなったと考えられるのである。
 単純な任務ではあるが,攻撃する側にとってみれば,狙いやすいターゲットであることは間違いなく,ただひとつのターゲットを破壊するだけで,連邦の屋台骨を揺るがすことが可能になるのである。

 同様に,宇宙開発が進むにつれ,それらの施設や設備,機材と言ったものは宇宙移民の反対派にとって明確なターゲットであり,また,宇宙軍にとっては「連邦の宇宙移民推進」にとって必ず守るべきものだったわけである。
 宇宙への物資輸送や移動手段が,従来のロケット(やシャトル)といった設備から,マス・ドライバーのような大規模質量の移転設備へと移って行くにつれ,宇宙軍の重要度は,加速度的に増していったと考えられる。また,同時に宇宙軍の装備の開発は,それ故に加速度的に進んでいったといえるのである。

 しかし,旧来の兵装とその運用に関するノウハウが存在する陸,海,空軍にとっては,宇宙軍が行っている施策は理解が難しい(厳密に言えば,「全てが新しいことなので理解できない」)内容なのであり,反発が起こるのは当然とも言える。
 元々3軍間でも対立が存在することから考えれば,より一層理解するのが難しい宇宙軍が対立の対象になるのは当然とも言えるのである。(*4)

 この流れは,一年戦争時にまで続いており,一定の解消をみるのに長大な時間がかかることとなった。

 地球連邦軍は,連邦政府が実質的に崩壊する宇宙世紀200年代に至るまで,連邦の中心的組織として君臨し続けることとなる。(*5)しかし,政府組織に軍人が介入することは,「健全な政治環境」とは言い難いことも事実であり,後に進む連邦の腐敗は,実質的に連邦軍の腐敗と等価である。
 宇宙世紀140年代に起こった宇宙戦国時代もこの連邦の腐敗が事実上の引き金であり,様々な(本来なら成立し得ない)コロニー国家を生み出してしまうこととなった。(*6)

 これは地球連邦政府の成立した成立過程とは全く逆の流れであり,緩やかな統合組織であることが理想であった「地球連邦」が,瓦解していく証明に他ならない。結果として宇宙世紀218年に連邦は瓦解するが,この際の発端もやはり「軍部」にあったのである。
 この点は,連邦の理念の崩壊が進んだ結果ともいえるだろう。

 そして,遠回しな見方にはなるのだが「地球連邦」という単一国家は,結果的に「軍事主導国家」になってしまったということなのだろう。


 註釈

 本文中の注釈である。
 記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。

(*1)

 これはあくまでも連邦政府側から見た立場である。当然ながら,民族戦線など反連邦政府側の立場からすれば,別の見方(奪回,解放)となる。
 こういった各勢力側からの視点は,歴史解釈において様々な推測を可能とする。しかし,基本的に歴史書は,当時の「為政者」の視点で纏められることが多く,また,その内容も後の「次の為政者」に都合が悪くなると改竄されることが多くなるため,歴史書的観点から纏めると,どうしても「それが真実かどうか」という点では疑問符が付くことになるのである。

(*2)

 連邦軍編成の中心となったのは,アメリカ軍であったという説がある。
 実際のところ,連邦の成立以前の国際組織であった国際連合の保有した国連軍の編成に準じて考えれば,連邦軍のベースがアメリカ軍中心であったことは否定する方が難しいだろう。
 また,1999年からの10年間は,連邦軍こそ存在しなかったが,実際には各国の軍の連合組織(それこそ国連軍のような体制だが)が,連邦政府の補助組織として運営されていた可能性は高い。
 ただし,アメリカ軍もまたその内部での対立構造(陸軍と空軍といった対立構造)があり,これは連邦軍が編成されても残っていたようである。

 なお,既に21世紀となった我々の視点でみると,国連軍(連邦軍)アメリカ軍だけで編成するのは難しくなってきているのだが,この点は機動戦士ガンダムという作品が製作された1979年と,それらの設定が固まってきた1985年頃までの情勢を中心に考えるべきだろう。(蛇足ながら,現在の各種設定でそういった不整合部分が見えるのは,冷戦以後の世代が資料編纂に関わっており,こういった冷戦時代の情勢を知らないことが原因にあるのかもしれない。)

(*3)

 もちろん,連邦軍がジオン軍に苦戦した最大の要因はMS(モビルスーツ)の存在であることは間違いない。しかし,地球上での勝手の判らないジオン軍が戦線の拡大をはかれたのは,やはり地元の反連邦活動組織との繋がりが構築できたことも理由のひとつだと考えられるのである。
 この点は,後にアフリカ解放民族戦線とジオン軍残党との連携など,幾つかの資料で確認することができる。

(*4)

 この代表的な例として上げられるのが,FF-3セイバーフィッシュの導入に至る経緯である。この計画では,宇宙軍と空軍との確執が機体の設計に大きな影響を与えている。
 詳しくは,各種資料を参照して頂きたい。

(*5)

 地球連邦政府に連邦軍の影響が大きいのは,連邦政府の議会議員になるには,連邦軍人としての軍役が必要になっているためである。
 これは,事実上軍閥政治と変わらず,政府が腐敗することはすなわち軍の腐敗と直結するのである。
 これはU.C.0218に地球連邦が崩壊した後に結成されたセツルメント国家評議会が事実上軍部主導であったこと(連邦をクーデター的崩壊に導いたのが結果的に連邦軍そのものであったこと)からも分かるだろう。

(*6)

 コロニー国家の成立と経済については,後述する宇宙戦国時代の項目を参照して頂きたい。この時代には,コロニーが独立国家として成立する可能性は極めて低いとしか言いようがないだろう。
 なお,ジオン公国と一年戦争時のサイド6の自治権に関しては,実質的に別のものであるため,特に項目を設けてはいない。

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最終更新時間:2009年10月12日 19時23分55秒

脚注