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考察:Laboratory Report/第1章 宇宙世紀概要(1)

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第1章 宇宙世紀概要


 1979年に放映が始まったテレビアニメーション「機動戦士ガンダム(以下,ファーストガンダム)」は,日本におけるアニメーション史上に画期的な作品の一つとなった。それには様々な理由があるが,いずれの理由も「ガンダムがヒットした理由」にはなり得るであろう。

 逆に言えば,こういった様々な理由が複合的に重なった結果,「ガンダム」という作品は今日まで続く長期シリーズとなったと言えるだろう。本章では,最初に放映されたファーストガンダムが用いていた架空の暦「宇宙世紀」に関して時代ごとの概要をまとめている。

 なお,以降の本文と註釈で執筆のスタンスが違うので注意していただきたい。(本文は,宇宙世紀の遙か未来に生きる人間として,注釈は我々「ガンダムという作品を見ている者」としてのスタンスでまとめている。)

概要は,PDF版では章頭にのみ記載されるが,Wiki項目では説明の為に各小節ごとに掲載している。

1-1 地球連邦の成立と宇宙世紀の夜明け


 西暦1950年代から80年代にかけて展開した宇宙開発は,当時の東西二大大国,すなわちアメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦の技術開発の威信競争の形で展開された。
 つまり,第二次世界大戦の名残として続く東西冷戦構造において,宇宙開発も相手に対する技術威信の意味合いが強く,片方の技術的進歩をもう片方が追い越し追い抜く,といった形で加速度的に進化してきたのである。
 宇宙開発は,当初はいずれの技術も軍事目的からスタートしている。当時は,東西両陣営とも第二次世界大戦での敗戦国であるドイツ軍の開発した「未完成ながらも発展的な技術」を積極的に接収し,その技術を自らの兵器開発に転用していた時代であり,宇宙開発技術もそういった技術の一環であったのである。
 その後も軍部主導で進められた技術開発(*1)は,結果的にソビエト連邦が崩壊し,ロシア共和国となった後も続けられた。

 軍事技術としての宇宙開発は,東西対立がその発展の基本的な部分にあったことは述べたとおりである。しかし,時代が進むにつれて「東西対決」という対立構造は薄れ(無くなったということではない),次第に新興国と旧来の経済大国の対立という「南北問題」へとシフトしていった。
 もちろんこれは,様々な問題が原因で対立構造が形成されていったためであるが,この結果,1990年代に入ると,従前の「戦争」という枠では括りにくい対立構造が前面に押し立てられ,(経済面の対立が原因であるともいえるのだが)宗教観や民族間が原因となった紛争が数多く起きることとなった。
 この結果,場合によっては国家レベルよりもはるかにミニマムな紛争が世界規模の紛争の原因になることすら起こるようになってきたともいえるのである。

 ここに至って,「国家という枠」から飛び出した統合組織を立ち上げるという必要性が叫ばれるようになり,西暦1999年,国際連合をベースとした新組織「地球連邦」が成立するに至った。
 これによって従来の国連の枠を一歩進めた統合政府という形の連邦政府と,連邦を構成する諸州国家という形の旧国家,という構造へ世界は変革したのである。
 誕生した地球連邦は,食糧問題や民族紛争問題など種々の未解決事案を残したままであったが,人類の統合国家成立の礎として大きな一歩となった。そして,同時に様々な事案の解決に急速に動き始めた。その中の一つに,人口問題の解決としての宇宙開発があったのである。(*2)

 連邦政府は,同年7月29日に,「人類宇宙移民計画」(*3)を発表した。これは,食糧問題と人口問題の解決を目指し立案された計画であるが,当時の技術レベルでの実現可能なギリギリの計画であり,莫大な費用が必要と想定された。それでも「人類が地球にかける負担」が既に限界に近い状況であったことも後押しし,人類宇宙移民計画は推進されることになった。

 宇宙移民計画の推進において,まず様々な環境整備が行われていった。
 西暦2005年には,太陽光発電衛星の1号機が打ち上げられ,従前の化石燃料や核発電に頼った電力供給から,太陽光発電へのシフトが始まっている。またこれと同様に宇宙開発技術の進歩は,より一層加速度的に進められ,人類が宇宙で生活するに充分な安定的な技術が次々と開発されていったのである。

 人類移民計画の発表後,軌道上にはより安定的なステーションや研究施設が運用されるようになり,西暦2022年には,月面に次代を担う宇宙居住地である「スペースコロニー」を建造するための資源運搬用のマス・ドライバーが設置されている。
 また,西暦2026年には次世代のエネルギーとして期待される核融合発電の燃料として,ヘリウム3を確保するための木星エネルギー船団が変性され,木星へ向けて出発している。
 こうして移民計画の発表から,宇宙移民のための技術開発と環境整備を地球連邦は進めていく。宇宙では,様々な関連技術の実証試験やコロニー開発のための準備施設の建造などが行われ,地球では移民者の選別や準備が進めれ,宇宙開発の従事者の育成なども進められていった。

 そして,西暦2045年,第1号の移民用スペースコロニーがついに建造を開始されるのである。(*4)この建造開始を期に,年号もそれまでの間用いられていた西暦(Anno Domini)から,宇宙世紀(Universal Century)へと変更となっている。(*5)
 この年号の変更も,これからの人類の宇宙進出を後押しするためにあえて「宇宙」を押し出したものとして設定されたといわれており,人類の宇宙への進出は,物心両面から意識させられていったのである。

 こうして,新しい宇宙時代〜宇宙世紀時代がスタートしたのである。…様々な問題点を抱えたまま…。この点については,第3節で語ることとしよう。


 註釈

 本文中の注釈である。
 記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。

(*1)

 意外と思われる方も多いとは思うが,現在の宇宙開発も基本的には軍部主導で行われているのである。実際,NASAは,軍の1機関であり,スペースシャトルも現在は軍の所属である。
 もちろんかつてと異なり,民間主導で行われている計画も多い(極論すれば日本の宇宙開発は,基本的に民間主導であるといえる)のだが,基礎的な開発技術は,やはり軍部発のものが多いのである。
 なお米ロ両国とも,90年代に入ると宇宙開発技術の民間解放が積極的に行われるようになっており,民間交流や国家間交流も積極的に行われるようになっている。
 また,ガンダムにおいては,元々の年表がソビエト連邦時代にまとめられているため,ロシア連邦が誕生しなかった,という説もあることを触れておきたい。

(*2)

 連邦政府が各地の民族紛争など,様々な問題の解決に動いていたということは間違いないと考えられる。
 しかし,人口問題と他の問題とでは人口問題が優先されていたであろうことは想像するに難くない。(これは,第1次ネオ・ジオン抗争時などに民族戦線の活動が確認されている点でも想定可能な範囲だと思われる。)
 連邦成立の時点で,地球はその人口を支えるには厳しい状況に来ていたことは間違いなく,地域紛争は従前から残る各国軍(をベースにした連邦軍)に任せたのではないだろうか。逆に言えば,抵抗組織にとってみれば「連邦軍と名を変えただけの相手」でしかなく,それ故に,各地の抵抗運動は減らなかったのではないかと考えられるのである。


(*3)

 人類移民計画は1999年7月29日に発表されたという説がある。
 現在の資料では,こういった「宇宙世紀以前」があまり取り扱われなくなってきている。これは,「既に1999年という連邦成立の年を,実際の世界(西暦)が超えてしまった,というのが最大の理由ではないかと考えられる。(既に定着してしまった西暦2045年1月1日=U.C.0001.1.1は,簡単には覆せないし,それ以前の西暦年間の設定は,非常に難しい位置づけになってしまったということなのである。)
 逆に言えば,そういった「明確な年号の切り替え」が行われなかった(いわゆる)アナザーガンダム作品は,うまくこの辺を処理したと言えるだろう。
 また,ガンダムOOのように西暦を地続きにする方法もあるが,考えようによっては,ガンダムOOの世界観は最も未来(24世紀の物語である)であるとも言え,我々がいくら頑張ろうが,実際にどういった世界になっているかは分からないわけであるから,これはこれで問題にはなりにくいのである。
 ある種「近未来すぎた」のが宇宙世紀の年号における問題点ではあろう。(この点は,他のアニメ作品でも言えることで,例えば超時空要塞マクロスでは既にマクロスは「進宙している」わけであるし,北斗の拳であれば,地球は壊滅的なダメージを受けている。また,蒼き流星SPTレイズナーであれば,地球は異星人に占領されている,といった状況である。)

(*4)

 宇宙世紀の開始時の状況として,現在は,「コロニーの建造開始」という説と,「既に複数のコロニーが完成し,移民が開始された」という説が存在している。
 一見すると,並立しそうにない双方の説であるが,考え方を変えると並立することが可能である。
 例えば,機動戦士ガンダムΖΖにおいて,島1号型コロニー(ムーン・ムーン)が登場している。また,同様に機動戦士ガンダムF91では,ブッホコンツェルンがかつて購入したブッホコロニーが球形コロニーと設定されていることから,これもおそらくは島1号型であったのではないかと考えられる。
 ガンダムΖΖに登場したムーン・ムーンは,外界との接触が断たれ,独自の文化が芽生えていることから考えると,極めて初期のコロニーであるとしか考えられず,作品の設定年代(U.C.0088年)を考えると,かなりの年月を経たコロニーであることは間違いない。
 一方で,ΖΖに当初登場したシャングリラは「第1号コロニーであるため,既に老朽化が進んでいる」という設定である。

 この点を勘案すると,U.C.0001年には「移民用の島3号型コロニーの第1号」であるサイド1の1バンチコロニー・シャングリラの建造が開始され,「それ以前に既にムーン・ムーンのような島1〜2号型コロニーは複数が建造済みだった」と考えたほうが妥当であろう。

(*5)

 この年号の切り替わりの瞬間に起こった事件については,機動戦士ガンダム・ユニコーンで語られ,宇宙世紀の設定がまたひとつ深められた。
 ユニコーンで語られた連邦首相官邸ステーション・ラプラスの爆破事件は,「連邦政府の地球への固執」という状況,U.C.0100年のジオン共和国の自治権返上に至る経緯が纏められており,作中の結末から言えば,U.C.0100年代以降,連邦政府が徐々に力を失っていくのはある種の必然だったとも受け取れる状況である。

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最終更新時間:2009年10月12日 19時23分06秒

脚注