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GUNDAM OFFICIALS

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GUNDAM OFFICIALS(ガンダム公式百科事典)

  • [書籍]

 データ

データ
発行日2001/03/21
価格15000円(税抜き)
ISBN4-06-330110-9
発売元講談社
著者/編者皆川ゆか
監修サンライズ

 説明

 ガンダムオフィシャルズ(単に,オフィシャルズ,オフィと略されることも)は,正確には「機動戦士ガンダム公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS U.C.0079〜0083」というタイトルで講談社から刊行された「究極の百科事典」。2001年の発売時には,ガンダム20周年の節目の出版物として,これ以上ないクオリティで世に登場した。

 正式タイトルが示すように,扱っている内容は「宇宙世紀0079(厳密にはそれ以前も含まれる)年から0083年のデラーズ紛争」までだが,本の厚みが896ページ,約10cmにも達し,その3.5kgを超える重量から,「人も殺せる驚異の書籍」,「読み始めると止まらなくなるが,読み始める前まではとりあえず高価な枕にもなる」などの冗談も乱れ飛ぶほどの極めて高い資料性を持った書籍となった。
 ちなみに,その価格も15000円(税抜)とずば抜けており,当初はユーザー側が不良在庫化を懸念するまでであったが,実際には発行直後に2万部を超えるオーダーとなり,幾度かの重版がかかるこの手の書籍として売れ筋に分類可能な本となった。

 本書は,ガンダム関連著作を数多く持ち,数多くの作品に関わった皆川ゆか氏が約3年の年月を費やしてまとめたもので,「機動戦士ガンダム」およびその関連作品を,スペースコロニーやエレカなどの生活に密着した「物」から,歴史,人物,兵器といった様々な分野を総合的にまとめたまさに「百科事典」としてまとめられているのが最大の特徴である。


 なお,本書は体裁としては,「宇宙世紀時代の学者,ミナカ・ユンカース」の著書を黒歴史提唱者ヨック・ワック・オニモットがマウンテンサイクルから発掘,復元したものとして,本人の序文(実は富野由悠季監督本人が書した序文)と共に刊行されたものと,設定されている。

 だが,さすがに,刊行から年月が経過した現在,発表時からさらに加えられた新たな設定群の反映もなく,本書の続編となるべき「U.C.0084以降」を取り扱った書も登場していない状況下では,若干の古さも感じるようになってきてしまった[1]
 これは,ガンダムという作品世界が当時の予測を超えた拡散を続けたことに原因のひとつはあると考えられる。刊行された2001年の6月(つまり,刊行のわずか3ヶ月後)には,角川書店から「ガンダム専門誌」としてガンダムエースが刊行され,また同時期に新作の機動戦士ガンダムSEEDのスタートもアナウンスされるような状況であり,2000年までの20年間と比較して,ガンダム関連作品の展開が加速したといえるような状況になったのである。[2]

 無論,こうした状況を考慮して考えても,現時点でトップレベルに君臨する資料である事は疑う余地は無い。


本書の資料としての位置づけ

 本書の公式サイトには『ガンダムを愛する人たちが未来の叡智を共有するために!』というキャッチコピーが掲げられた。また同時に『GUNDAM OFFICIALSは限定本ではありません。ガンダムを愛する人たちが共通の基盤で,より深く語り合うためのツールとして、また、長く手もとに置いていただくアイテムとして刊行されました。』という刊行意図も掲載されており,本書が単なる「作品紹介本」ではなく,あくまでも長期に渡ってファンの間で用いられる「資料本」としての位置づけであったことが分かる。
 つまり,従前存在した「用語集」という形での解説書ではなく,あくまでも各々の資料から得られる情報を集約し,かつ整理した形で提示する「事典」の体裁をとっていることで,本書の位置づけを明確化しているのである。

 従前刊行された書籍類は,あくまでも「単一作品」をその「作品視点で解説」したものであり,ガンダム世界全体を俯瞰して見たものではない。(編集意図の問題もあるのだが,)本書刊行以前に高い資料性を持った書籍として取り上げられたものに,ガンダムセンチュリーやエンターテイメント・バイブルシリーズ,モデルグラフィックス別冊ガンダムセンチネルといった書籍が挙げられるが,実はいずれの書籍も一見すると作品世界を横断した解説を見せているように見えるのだが,実際には一側面からのまとめでしかないのである。(ガンダムセンチュリーは,刊行当時「機動戦士ガンダム」しか存在しなかったのでこの点若干例外的ではあるが…。)[3][4]

 こうした「事典としての位置づけ」を明確化する為に,通常ならば「編集:皆川ゆか」だけで済むところを,わざわざ「ミナカ・ユンカース」の著作を正暦時代に発掘復元した,という設定を付加しているのである。
 これは,ガンダム世界が歴史軸に則って展開していることを逆手にとったお遊びとも言え,こうした他愛のない設定が,また資料の位置づけを明確化したとも言えるのである。

編纂のスタンス

 本書の編纂にあたって,既存の資料と異なった明確なスタンスがひとつ存在する。
 様々な矛盾点や異説を単純に切り捨てるのではなく,両論併記しているのである。

 「ガンダム」関連の設定や情報といったものは,最初に放映された「機動戦士ガンダム」以降,オフィシャルズの発売に至るまで(さらにいえば,現在でも)膨大な量が新たに生まれ続けている。ここには,基本となる作品の設定,つまり「新作として公開される作品」[5]を「より深く(あるいはリアルに)感じさせる為」の設定[6]だけではなく,既存の作品との連携を考慮した「作品世界を広げるために付け加えられた設定」[7],作品における「描写を肯定する為に付け加えられた設定」[8],さらには,作品の派生作品(続編等)のために付け加えられた設定[9]……と,雪だるま式に増えていっているのである。

 これらの中には,資料の編者の解釈違いから異なった方向の解説文となってしまったもの[10]や,誤った資料を参照して孫引きが繰り返されたもの[11],マイナーな資料の存在が確認できなかったため結果的に設定がバッティングしてしまったもの[12],などミスや矛盾も数多く存在している。

 単純にミスならば修正も可能であるが,中には現在定説化してしまったものもあり,記述そのものを修正する事ができなくなってしまった物も存在する。
 特に作品単体としての位置づけを肯定する為の設定の中には,既存の設定とは相容れない設定も存在しており,これらが次々と矛盾を生じさせるという状況であり,こうした状況下で全てを俯瞰した完全な記述ができるはずもない。

 こういった矛盾点などをオフィシャルズでは,基本的に,まず「一般的な解釈を主流な意見」としてまとめ,矛盾する解釈等を「〜という説もある」という形で「異説」として記述するスタンスをとっているのである。
 こうした表記法は,本来ならば「いずれの説もありえる」というものであり,実際にはミスである記述すらも肯定してしまうこともあるため,扱いには注意を払う必要があるのだが,本書の場合は過去の資料を全て同一視点で俯瞰して見ている為,ミスであるかどうかの判断が付かない,という状況を「両論併記」という形でまとめているのである。

本書の評価

 高い資料性を持った書籍ため,既存の入手困難な資料のフォローもなされている事から平均的に評価は高い。しかし,その表記法に対して低い評価を与える人も多く,評価の分かれるところである。
 ただし,「百科事典」という位置づけと「宇宙世紀の未来から一年戦争当時を振り返る」という時代考証性から考えると,こうした資料の扱い方は必然である。逆に言えば,当時存在した資料について異説扱いにせよ言及されているという状況は,他の書籍類にはあり得ないメリットであり,こうした点は評価するに値する。

 なお,本書以降,こうした「宇宙世紀の出版物」という体裁の書籍が相次いで出版され[13]ている。こうした視点で制作された書籍は,その編集スタッフの力量によって完成度に大きな差異が生じており,本書ほど大きく受け入れられたものはないだろう。

 本書を評価するにあって,最大の評価は徹底したメタ視点の排除であろう。宇宙世紀(正暦)時代の資料としての体裁をとっていない部分は,富野監督による序文と皆川氏による後書きおよび参考資料部分だけであり,これは百科事典的出版物として必要最低限の項目である。この部分以外では,既存の作品設定は全て「発見資料」というスタンスが貫かれている。
 これは一般の書籍では難しい処理方法であり,本来ならば容易いはずのファン側の考察でもメタ視点を完全に排除した考察にお目にかかることは少ない。

 例えば,設定画稿一枚をとって考えれば分かりやすいだろう。

 上記画稿は,「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」に登場したモビルスーツ「グスタフ・カール」であるが,左側が小説口絵に掲載された物で,右側がゲーム「Gジェネレーション」シリーズ(及びMSグラフィカ)に登場した物である。
 では視点を変えて考えてみよう仮にU.C.0080年のモビルスーツパイロットにこの「写真」[14]を見せたらどうなるだろうか?
 答えは「見せる事は不可能」なのである。つまり,グスタフ・カールは,U.C.0105年頃のモビルスーツである為,どう考えてもU.C.0080年に存在しているはずがないのだ。この答えに対して設問が成立しない,という批判もあるだろう。だが,この場合,設問そのものが成立するという状況(あるいはそう考えること)こそが「メタ視点(ユーザー側の神の視点とでもいうべきもの)」なのである。

 逆に,U.C.0200年のモビルスーツパイロットにこの写真を見せた場合,どうなるだろうか。これも卑怯な答えなのだが,この設問では「結果はわからない」としか答えられないのである。というのは,この2機の写真を見せられた場合,小説版「閃光のハサウェイ」の未来世界であれば,「右側がグスタフ・カールで,左側は不明」と答えるであろうし,「Gジェネレーション」の未来世界であれば,「左側がグスタフ・カールで,右側は不明」であると答えるはずなのである。U.C.0200年とは指定したが,どの作品の未来であるか,という点には触れられていないからである。
 これを「右も左もグスタフ・カールである」と答えられる状況というのは極めて限られた状況,すなわち「両方とも実際に存在している世界」でしかなく,これはやはり設問時に明言されなければならないことであろう。そうでなければ,「同じ機体の作品間アレンジによる差異」というメタ視点による答えを述べているとしか言えないのである。

 この点で言えば,オフィシャルズは非常に安定したスタンスで編纂が行われているという貴重な資料である。
 逆に言えば,資料の正当性よりもその収録量に意味がある資料といった方がいいだろう。数ある資料のうち,「どれが正しい資料である」という編纂方法ではなく,「この事件を記した資料は,これだけあり,この説が主流である」という編纂方法なのである。
 この違いに気づけなければ,本書の価値は激減するだろう。

 なお,参考資料として「作品系譜」を製作してある。

 関連項目


 編集者


[関連用語]


最終更新時間:2011年11月10日 21時35分57秒

 ノート

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脚注

  • [1]著者である皆川ゆか氏が後に講談社から刊行した「[[ガンダム事典]]」が,内容や改訂状況からも事実上の後継と言って過言では無いが,ガンダム事典は主に技術面とモビルスーツを中心に扱ったもので,本書の様な百科事典としての位置づけには乏しい点は否定出来ない。
  • [2]実際,展開された作品数を比較すると,ガンダムエース刊行後は,桁違いに作品数が増えているのである。
  • [3]説明しづらいのだが,同じ用語を扱うにしても作品視点でみるのと,世界観視点で見るのとでは表現が変わってくる。こうした点で,オフィシャルズは未来から過去を振り返るという手法で,「事象を俯瞰的にまとめた」点が画期的だったのである。実際,ファン側が行っている考察は,(できているか,いないかは別にして)こうした立場をとる事が多いのだが,これを出版側が行ったことは画期的なのだ。事典ではないが,編纂スタンスの根っこの部分が同じであるセンチュリーも元を正せば同人誌であることを考えると,ユーザー側故にやりやすいスタンスとも言えるのだろうが……。
  • [4]蛇足ながら,ガンダムセンチネルは編集方針が全く異なるので,この場には相応しくないとも言えるのだが,資料性という面で匹敵するので並べている。センチネルの場合,「ガンダム世界で遊ぶ為のルール」を示した訳であり,「センチネル世界のルールを構築」する為にガンダム世界のルールを用いたに過ぎない。つまり,世界横断的な「事典」を作成する必要は無く,当初から「用語集」で充分だったのである。
  • [5]編集時期で言えば,機動戦士ガンダムUCのOVA版などを意味する。
  • [6]具体例を挙げればガンダム00の太陽炉などがまさにこれに該当する。
  • [7]具体例を挙げれば,ガンダムUCにおけるNT-Dやフル・サイコフレームといった設定など。
  • [8]実はガンダムSEEDに多いのだが,MSが飛行可能となる条件,PS装甲の強度などが,こうした例に該当する。ファーストにおいては,ホワイトベースが何故大気圏内を飛行出来るか,といった部分などが相当する。
  • [9]これはSEED以降の公式外伝でよく使われる手法である。ガンダムOOI/Fでは,いまだ明かされない伏線も多く,次作がいつ登場してもおかしくない。
  • [10]初期のビーム兵器が光線兵器としていた資料などがまさにそれである。
  • [11]代表的なものがΖガンダムにおける「ガザC」の型式番号であろう。その結果,これらの記述は誤った方が定説となってしまっている。
  • [12]現在ではほとんど起こらないのがこの例であるが,ポケットの中の戦争でアレックスをガンダム3号機といったりガンダム4号機といったりしたのは,当時サンライズが公式資料以外を考慮せず,MSVの資料を未確認だった為におこった事例である。
  • [13]アナハイム・ジャーナル,マスターピースシリーズなど様々な書籍がこうした体裁をとっているが,一定の完成度に到達した書籍は少ない。これは,後述したメタ視点がどうしても払拭し切れていないからである。ちなみに,こうした方法論は昔から存在している。B-CLUBに掲載されたMSジャーナルや小mono辞典などがその一例であり,MSジャーナルは実は当時としては完成度の高い「宇宙世紀視点」の記述であった。
  • [14]画稿を写真という解釈をとることは,MSVの時代から既に行われていたことであるが,その方法論は考察面としては正しい考え方のひとつである。