!!!毒ガス *[用語] //*読み: *分類:その他 *区分:[[宇宙世紀]] *出典:[[MSV]]ほか !!説明  生物に有害な気体やエアロゾルの総称。なお,「有毒ガス」とした場合は,軍事用のガスを除いたものとされる場合が多い。すなわち,兵器として用いられる「化学兵器」の俗称が毒ガスということになる。  身体に有害なガスとしてあげられる「火山性ガス」,「一酸化炭素(などの燃焼性ガス)」,「(車などの)排気ガス」といったものは,一般的には「有害ガス」という区分になる。  毒ガスとは,人体または動植物に対して毒性を示し,気体もしくは気化,霧状にして散布しやすい物質の総称であり,その成分は問わない。  歴史上,最初に用いられた戦いは不明であるが,大々的に兵器としてガスが用いられたのは第一次世界大戦であり,その中でもイープールの戦いにおいてドイツ軍が塩素ガスを使用したのが大規模運用の最初の例と言われている。(その後,塩素ガス対策が取られるようになって,本格的な毒ガスとしてマスタードガスが第1次世界大戦中に用いられている。)  ちなみに,毒を用いるという手段は古くから用いられており,これを煙に混ぜいぶすなどの方法は,それ以前から存在している。例えば,ローマ時代には亜硫酸ガスを敵に向けて利用したという記録がある。  化学兵器とは,化学物質(特に毒性化学物質)を用い,人や動物に対して被害を与えるために用いられる兵器の総称であり,厳密には毒ガスだけでは無く,それを散布する仕組みや装備なども含まれる。(なお,いわゆる細菌兵器や悪性ウイルスなどを用いる場合は,生物兵器と分類されるが,こちらに生物起源の毒素をガスとして用いる物は含まれることが多い。) !毒ガスの分類  現在,毒ガスとは気体状のものだけでは無く,高い揮発性を持つ液体(その気化,昇華した気体が高い毒性を持つ),あるいは液体そのものが高い毒性を持つものもその一種として含まれる。  また,当初はいわゆる致死性ガスや窒息性ガスなどが毒ガスとして取り上げられることがほとんどであったが,第2次世界大戦直前には神経性ガスも開発されており,こうした「より危険性の高い」ガスも当然ながら毒ガスに含まれるようになった。  化学兵器は大量破壊兵器の一つとして大きな制限が加えられているが,条約や時代背景によって,その区分が異なることが多い。全般的に共通しているのは,致死性ガス,あるいはそれに準ずる障害等を身体機能に発生させるものは,その使用や保有を禁じている,というものである。逆に催涙ガスなどは,軍事用に積極的に用いない限りは,あくまでも警備用と割り切っている場合も多い。  このように,ガスにはまず「致死性」・「非致死性」の区別がある。致死性ガスは,極めて微量でも人間を十分に殺す事ができるものがほとんどである一方,非致死性ガスは,一般的には短時間の噴射では死者は出ないとされているガスである。しかしながら,非致死性ガスも運用によっては十分人を殺す事は可能であり,致死性・非致死性の区別というものは,事実上致死量の大小で大まかに区切られているに過ぎないと言っていいだろう。  一方,「即効」・「遅効性」の区別もある。前者は,ガスを散布して直ちに効果が発生するもので,サリンやVXガスなど噴霧後僅かな時間で死に至るガスは即効性ガスと区分される。一方,マスタードガスの様に,環境を汚染したり,人間に障害を残してしまう様なガスを遅効性ガスという。  一般的に前者は,極めて短時間(せいぜい数時間)しか効果が持続しないため,運用が難しいという特性がある。一方,遅効性は作業そのものは容易だが,長期間効果が持続してしまうため,必要以上の打撃を生じさせてしまう場合も多い。  なお,ガスの効果による分類もある。  皮膚を爛(ただ)れさせる効果があり,遅効性で身体に影響を与えていく「糜爛性ガス(びらんせい)」や,それ自体は有毒ではないが,酸素供給の妨害などにより呼吸する生物を窒息させ死に至らせる「窒息性ガス」{{fn これは,窒素,二酸化炭素,不活性ガス,低分子の炭化水素などの一般的に入手可能な「ガス」であり,使い方によって兵器となる例である。}}というものもある。 !兵器としての長短所  一般的に毒ガスは,長所も多いが短所も多いという認識の兵器である。長所としては,比較的,開発・製造{{fn 一般的に兵器とはその国が持つ開発リソースを占有して生産されるが,化学兵器の場合,開発リソースを占有しないという特徴もある。すなわち,銃や戦車,戦闘機などとは根本的に生産ラインが違うということが,製造を容易にしている部分も多い。}}・保管が容易く,一度に大量の死傷者を生じさせることの可能な「効率的な兵器」である点が挙げられる。  逆に短所としては,天候(風向き,雨天・晴天)に左右されやすい,戦闘員には効果が低く非戦闘員を巻き込みやすい(軍人は一般的に戦争状態に陥ると,対化学兵器装備を用いるのが常である),核と異なり同種の兵器で報復{{fn しかも,非戦闘員を巻き込んだ場合,最初に用いた方が一方的に非難されやすい。}}を受けやすい,といった短所もある。  また,長期間影響が残るものも多く,仮に領土を制圧しても,汚染されてしまった場合にはまったく意味をなさない場合もある。(ベトナム戦争における枯れ葉剤散布などがこれに近い。)同様に,保存するのは容易くても,管理ミスなどで汚染されることも多く,簡単に分解・廃棄処理できないという特徴も持つため,結果的に引継ぎ等の問題から存在が忘れ去られ,土地を汚染した例などもある。  なお,防御装備を持たない軍人(例えば,最貧国の軍)や民間人ゲリラなどに対する効果は大きいため,その所持を正当化(ただし,おおっぴらに「運用した」と宣言した事は無いが)する軍もある。  しかしながら,ゲリラなどであっても「軍人」ではないため,犯罪者として裁くべきだという意見も多く,条約などではこうした勢力に対する運用も禁止している場合がほとんどである。  また,先の長所もあって,ある程度の化学的知識と設備,それに必要な試薬(大半が一定の規模の薬局などで購入出来てしまう)があれば,製造することが可能である。  このため,冷戦後は軍事兵器という側面よりも,テロ組織や資金に困窮する国が生産し,利用することが危惧されている。 !代表的な毒ガス  ここでは,代表的な毒ガスについて簡単に説明を行う。  いずれも,高い殺傷能力を持つ毒ガスであり,特徴的な効果をもっている。  なお,実際に劇中に登場した各種ガスに関しては,各項目を参照の事。 {{anchor マスタード}} :マスタードガス:  糜爛性ガスの一種。  化学兵器に使用される毒ガスの中でもメジャーな物の一つ。遅効性ガスの一つで,残留性,浸透性が高く,一般的な化学ゴムの防御服が役に立たないのも特徴。  1917年に実際に使用され,初めて使用した地名から「イペリット」とも呼ばれる。  皮膚を侵すガスで,その見た目とにおいからマスタードという名称を付けられたという説がある。 {{anchor サリン}} :サリン:  神経ガスの一種。第2次世界大戦中に,ドイツで開発された。  日本国内では,オウム真理教による散布事件で有名{{fn この事件以後,サリンそのものやそれを製造可能な薬品の所持等には制限があり,一般人は保持も生産も禁じられている。}}となった。  名称は,開発者(複数)の名前から付けられたもので,成分上からは「イソプロピルメタンフルオロホスホネート」と言われる。  元々は,殺虫剤の開発過程で発見されたが,あまりの毒性から化学兵器に転用されたという特徴を持つ。  極めて高い毒性を示し,なおかつ極めて早い効果を示すガスのひとつ。呼吸による吸収だけでは無く,皮膚からも吸収されるため,高い機密性を持つ防護服を着用する必要がある。また,致死量に満たず助かったとしても高い確率で障害が残るとされており,毒ガスとしては非常に完成された兵器だといえる。  一方で,サリンは熱や加水分解に弱く,毒性を維持したまま実戦に投入するのは難しいとされている{{fn 故に,オウム真理教による事件では,夜に風に乗せて散布したり,液化したものを地下鉄内で気化させるという方法が用いられている。}}{{fn 蛇足ながら,北朝鮮でのサリン保有疑惑はかなり根強いが,これを弾道ミサイルで散布するだけの能力は,保持していないと見られている。特に発車後の熱対策に関しては,全く技術を持っていないとも言われているため,現時点(2011現在)では直接的な攻撃以外は,ほとんど心配いらないと考えられている。}}。  また,その製造には大がかりな設備が必要であるため,通常,民間組織などが製造するには足がつきやすい{{fn 故に,オウム事件では,そのチェック体制に問題が残るとも言える。}}。 {{anchor VX}} :VXガス:  神経性ガスのひとつ。  致死量,安定性,運用性等々,猛毒の毒ガスで,人類が作った化学物質の中で最も毒性の強い物質といわれるほどのガスである。  一般的には液状で,無味無臭。これを霧状にして噴霧する事で毒ガスとして用いる。  第2次世界大戦後にイギリスで開発されたもので,揮発性が低く残留性が高い上に,化学的安定性も高いという理想的な成分であったため,最強のガスとの名を頂くに至った。  通常,散布された毒ガスは一定期間を持って希釈,分解,拡散され,その効果は薄れていくが,VXガスの場合は,状況によっては一週間程度残留する可能性があり,また,極めて高い致死率と少ない致死量,そして高い浸透性を持つため,僅かなガスを吸ったり,あるいは,VXガスの付着した物に触れたりするだけでも,死亡に至る場合もある。  防護服もサリン同様高い機密性と耐浸食性を持っている必要があり,作戦終了後は必ず化学洗浄剤による除染作業が必要になる。  このようなガスであるため,実際の戦場で使用されたという事例は記録されていない。しかし,運用を初めて行ったのはオウム真理教であるとされており,教団に対立する人物の殺害に用いたとされている。 {{anchor 塩素}} :塩素ガス:  塩素単体による分子ガス(Cl2)のこと。  強い漂白,殺菌作用を持つ気体だが,これを多量に用いる事で,その効果を毒性にまで高めてしまうこと。(というよりも,もともと塩素ガスそのものは毒性であり,これを薄める事で漂白,殺菌作用として用いているわけである。)  高い電気親和力を持ち,それ故に人体の抗生物質とも安定物質を造りやすく,これを吸うとまず,呼吸器にダメージを与え,呼吸不全を引き起こす。 {{anchor ホスゲン}} :ホスゲン:  第1次世界大戦中に開発が進められた毒ガスのひとつ。  炭素,酸素,塩素の化合物で,二塩化カルボニル(COCl2)などとも呼ばれる。  その性質上,加水分解による化合物を生じやすく,特に人間が吸った場合,体内で塩化水素を生じさせるという特徴がある。 !!関連項目 *[[G3ガス]] *[[GGガス]](ダブルジーガス) !!編集者 *あさぎり ---- {{category 用語}} {{category 用語・UC}} {{category 用語・∀}} ---- {{lastmodified}} !!ノート ■[[本項目に追加情報を記載する|BBS2]] ※追記できる情報(他愛のないものでかまいません)がある場合,上記リンクから記述専用ページに移動し,情報投入をお願いします。