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考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(4-7)

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第2章 宇宙世紀の技術

 宇宙世紀の概要については,前章で簡単に説明を行った。本章では,これら時代時代に応じた技術的な面を概要と詳細の形でまとめていきたい。また,各陣営ごと,開発メーカーごとのMS開発に関する技術系譜等も本章で扱う。
 特に,宇宙世紀初期と記録の残る終盤である,200年代ではその世界環境が大きく異なるため,これらも含めて技術論という形でまとめておく。

 なお,各モビルスーツの詳細データ等,個別考察については第4章以降にまとめているので,そちらを参照してほしい。

 2-4 モビルスーツの開発メーカー


 本項では,ジオン公国軍及び地球連邦軍におけるMSの開発メーカーについてその概要と詳細をまとめている。また,関連してMSの爆発的な進化が続いたグリプス戦役期頃までのMSの開発に関わった企業や組織等についてもまとめている。(企業ではなく,軍主導で開発が進められた機体群も存在するため,こういった表現になっている。)
 この時代,MSという機動兵器の基礎フォーマットが確立した時期ともいえ,以降のMS開発はこの成熟が続いていった時代と区別することが可能であり,それだけに様々なメーカーがその技術を競った時代だとも言えるのである。また,メーカーの違いはMSのコンセプトの違いとも言える時期であり,こうした時代を経て,MSという兵器は完成度が高められていったのであろう。そのため,この時代のMSは,初期にMSという兵器が登場した時期から,様々な用途別,機種別分類が確立するまで,非常に短期間で成熟しており,(一般的には兵器の成熟には非常に長時間がかかるものであるのだが)わずか20年ほどで第1〜第5世代まで急速に発展している。(ただし,基礎的フォーマットの確立は第2世代でなされており,以後の機種は多くがこの第2世代MSをベースとしているのは注目すべき点である。)

 第1節から第7節までは,これら一年戦争前後から第2次ネオ・ジオン戦争というMSが急速に発展した時代のMS開発メーカー,組織を重点的に解説している。また,宇宙世紀100年以降に登場したMS開発メーカーに関する概要や詳細については,代表的なものを第8節以降にまとめている。


2-4-(7) 地球連邦軍


 厳密に言えば,地球連邦軍という形でのMS開発は行われていない。あくまでも,連邦軍の各工廠とそれに協力するメーカーによってMSの開発が行われているのである。
 この点は,地球連邦軍のMSを語る上で,重要な事柄である。

 地球連邦軍の成り立ちとそのMSの開発が,数少ない情報を頼りに模索していた段階からMS-06の鹵獲によって急速に進歩していったことは,これまでの項目でも触れてきた。
 連邦軍のMS開発は,その成立過程が影響していなかった,とは言い切れないからである。知っての通り,連邦軍の原型は旧国連参加国の国軍である。つまりは,指揮系統,装備運用系統など,既存のものがベースになっているのである。逆に言えば,MSのような全く新しい兵器体系は,どうしてもその導入に二の足を踏んでしまい,一般化しにくいということを示している。
 しかし,宇宙軍に関しては,新たな兵器体系の模索を行いながら,成立してきた軍という事情があり,まだ陸・海・空軍に比べれば,MSを受け入れやすい土壌があったといえるだろう。(ただし,それでも連邦軍の兵器体系が既存のものに縛られていたことは,宇宙軍であってもかわりはなく,それ故に大艦巨砲主義が蔓延した,といえるのであるが……)
 だが,宇宙軍は,開戦直後にジオン公国軍のMSの脅威にさらされ,その威力を目のあたりにしたことで,(多少なりとも)MSという兵器に開発のリソースが割かれていったのも理解はできるのである。
 この結果,一年戦争中〜後期を通じて,MS開発の主導権は宇宙軍にあり,MSの基礎フォーマットは宇宙軍開発機に準拠することとなった。

 しかし,連邦軍内部でのMS開発は,それぞれの立場でばらばらであり,統一性が取れていなかったということも資料が明らかになればなるほど見えてきているのである。
 一例をあげれば,宇宙軍と空軍の確執は,MS開発においても見る事ができる。RX-78の運用後,連邦各軍にMS開発データがオープンとなり,各軍でMSの開発が開始され,いわゆる「ガンダム」が複数建造されていった。そのベースとなったデータは,G-3のものだとされており,同時に建造の為のパーツ群も用意されていたとされている。だが,空軍に関しては,データのみの提供であったとも,データの一部のみの提供であったともされており,空軍は独自にMSを開発するしかなかったのである。(*0)
 これは,必要ないリソースを各軍が費やしていたということでもあり,本来ならば忌むべき行為である。
 それでも連邦軍が勝利できたのは,ひとえに国力の差といっていいだろう。

一年戦争前〜戦中のMS開発

 一年戦争時には,宇宙軍が開発した3種のRX型MS,すなわち,RX-78ガンダム,RX-77ガンキャノン,RX-75ガンタンクによってその基礎的部分が確立すると,セカンドロットと言われるRX-78をベースに各軍それぞれの「ガンダム」(*1)の開発に注力し,一方で大量配備が行われたRGM-79ジムによる戦線構築が計られていった。

 連邦軍のMSは,いずれの機種も基本的には,ジャブロー,オーガスタなどといった連邦軍の開発研究所を中心に開発が進められており,民間企業によって開発されたものではないのが特徴である。これは,MSという兵器に対する連邦系企業の取組の問題が最大の理由ではないかと考えられる。
 すなわち,連邦系企業では,各軍向けの兵器開発企業が事実上割り振られており,「新たな兵器体系」を模索するだけの柔軟性が欠如していたのではないかと考えられるのである。こういった体質を如実に表しているのが,FF-S3セイバーフィッシュのトラブル(*2)ではないだろうか。
 また,陸軍などは地球侵攻作戦によって初めてMSの脅威にさらされ,その時点でMSの重要性を認識したというていたらくである。こういった地球規模での単一国家故の軍の「緩み」が地球連邦軍には蔓延していたということであろう。
 こういった体質は,一年戦争のさなかでもそれほど変わるところはなく,ジオン公国軍との戦いというよりも「軍内部での主導権争い」を中心に考えていた将官も多く,この点から言えば連邦軍の体質が兵器開発にも表れていたと言えるだろう。

 結果的に連邦軍が一年戦争に勝利したのはRGM-79とRB-79ボールの大量投入による物量戦によるところが大きい。しかし,MSという新型兵器の質からいえば,圧倒的にジオン公国軍に分があり,それだけに戦後の評価も様々なのである。
 しかし,RGM-79はシステム化された兵器体系に位置づけられたMSとして考えると,非常に完成度が高く,実のところ戦術としてはおおざっぱな状態であったジオン公国軍に対して,MS運用戦における基本的な戦術が確立されたこと(*3)は大きく評価すべきところであろう。
 RGM-79の大量運用は,様々な戦線構築に有効にはたらき,各戦線で必要な種類の機体を生み出した。これらの特殊な機体はRGM-79のブロック構造が功を奏し,ゼロから設計を行うのではなく,一部の設計変更で生産が可能なものが多かったのである。この結果,RGM-79はMS-06に匹敵するほどのバリエーション機を生み出しており,廉価版の大量生産機としてでありながら汎用性の高さを見せつけている。これは,いうまでもなくベースとなったRX-78のポテンシャルの高さが要因であるが,ここに至るまでの技術陣の開発計画(軍の上層部ではない)も優れていたと言わざるを得ないだろう。

一年戦争後の連邦軍のMS開発

 一年戦争後,連邦軍がまず行ったのは,公国軍のMS開発技術の積極的な吸収であった。確かに戦略面では,連邦軍の勝利で終わったもののMSという新型兵器の開発に関しては,完全に後手に回っていたことは否めないからである。
 特に公国軍で開発された量産型MSの完成度は高く,一年戦争最大の激戦の一つであるア・バオア・クー攻防戦に投入されたMS-14ゲルググは,その基本性能だけに限って言えばRX-78にすら匹敵するという解析結果すら出されていたのである。つまり,連邦軍が勝利したのは「物量」によるところが大きいことを戦後入手した資料等も証明していたのである。

 連邦軍は公国(ジオン共和国)の戦後処理として最大のMS開発メーカーであったジオニック社を解体している。この際に技術者の各研究所への招聘,ペズン計画の拠点であった小惑星ペズンの接収など,様々な手段を用いて技術導入を行っている。

 また,こういった技術導入に伴い,MSの生産施設の再編も行われている。
 いわゆる「拠点ナンバー制」と呼ばれる方式に移行したもので,宇宙世紀84〜85年頃から本格的に再編が行われているようである。それまでの連邦軍のMS開発は,それぞれの施設が独自に研究開発したものを生産する形ではあったが,基本的に開発した機体をジャブローの本部に申請し生産していた。そのため,申請待ちをするタイムラグやジャブローによる横やりも存在しており,様々な弊害もあった。そのため,各運用部隊からの要請や要望などを反映した機体を開発しても,それが認可されるまでに大きなタイムラグが存在していたのである。そのため,多くの施設や部隊では開発した機体を「カスタム機」として扱っていたのが現状なのである。
 多くのRGM-79のバリエーション機が,戦後ようやく型式番号の登録が行われている点には,実はこういった事情があったのである。(*4)

 こういった研究施設や開発施設ごとの新規MS開発を推進するという意味合いもあり,それぞれの生産拠点ごとに型式番号を割り振り,独自の認可が可能な形に型式番号の登録法を改めたのである。(蛇足ながら,この時点でMSの大規模生産設備を持たない開発拠点では外部企業への生産委託が可能になったものと考えられる。)(*5)
 これにはもう一つの理由がある。拠点ナンバーという制度を導入することは,これまでの様な単一生産ではなく,ジオン系技術の吸収による,さまざまな「新技術導入による実験機・試作機」が数多く登場することを見越したものであり,登録する種別が膨大になっても,とりあえずは対応可能という側面がある。
 実際,拠点ナンバー制度だと,(実際には,そういったことは起こりえないが)各拠点で少なくとも3桁の機種の開発が可能となり,実験機であろうと,量産機であろうと,単一のナンバー制度で処理が可能となるのである。
 例えば,ナンバー10のグラナダ工廠の場合,ナンバー101〜109,200〜209,300〜309,400〜409,500〜509,600〜609,800〜809,900〜909の合計99種のナンバーでの処理が可能となり,通常の開発レベルであれば,これを上回るナンバーは必要とはならないと考えられたのである。

拠点ナンバー制による生産拠点

 地球連邦軍のMS開発が拠点ナンバー制に移行した後のそれぞれの生産・開発拠点は以下の通りである。

  10:グラナダ工廠
  11:ルナツー工廠
  12:コンペイトウ(旧ソロモン)工廠
  13:旧ア・バオア・クー工廠
  14:ペズン工廠
  15:ニューギニア工廠
  16:キリマンジャロ工廠
  17:グリプス工廠
  18:ジャブロー工廠
  19:ジャブロー工廠

 これらを見て判るように,実のところグラナダ,コンペイトウ,ア・バオア・クー(ゼダンの門),ペズンと旧公国軍の基地が多いのである。一方で,ニューギニア,キリマンジャロ,ジャブロー,ルナツーといった従来の連邦軍の基地もナンバーの割り振りを受けている。

 こうした施設ごとの割り振りを見ると,独自に生産まで可能な施設もあれば,外部委託を想定した施設もあることがわかる。また,そのほとんどが既存技術(特にジオン系)の吸収・発展に力が注がれており,完全な新型機種を設計・開発を行っていた施設は意外と少ないのである。(*6)
 以降は,各拠点ごとの開発傾向を見ていこう。

グラナダ工廠

 拠点ナンバー10を割り振られたグラナダは,ジオン公国軍の拠点の一つであったグラナダ基地がベースとなっている。その中でも旧ジオニック社系の施設が中心となって運用されているのが特徴といえる。
 グラナダで登録されたナンバーには,RMS-106(RX-106,YRMS-106他),RX-107(RMS-107),RMS-108などが確認される。これらの機体の特徴としては,連邦軍の開発機ではありながら,そのほとんどがアナハイム・エレクトロニクス社による生産機であることである。
 これは,公国軍が基本的に開発をジオニック社に委託していたことが大きく影響しているのである。すなわち,戦後のジオニック社の解体に伴い,グラナダの各種ジオニック社施設などがアナハイム・エレクトロニクス社に吸収されたためなのである。

 そのため,ジオニック社系の機体開発が行われたのがグラナダ,ということができるだろう。特にRMS-106はMS-06の生産ラインを転換して生産されたとまで言われており,その点でも「グラナダであったが故に」開発可能な機体(*7)であった,ともいえるだろう。
 また,その後の開発機も基本的にジオン系とされており,同じアナハイム社でありながら,フォン・ブラウン工廠やアンマンといった施設とは違うという事なのだろう。

ルナツー工廠

 ナンバー11であるルナツーは,戦中から連邦のMSを開発していた工廠である。
 ここで戦後に開発されたとして登録されたナンバーに,RMS-117ガルバルディβ,RMS-119アイザック,RMS-116ハイザック(*8),RMS-114ジーム(*9),RMS-115バーザム(*10),RX-110ガブスレイが確認されている。
 これを見るとある事柄が明確にわかる。すなわち,ルナツー工廠は,基本的に「既存の機体の改修を行って,量産するための施設である」ということである。
 つまり,RMS-114はRGM-79系の総合的なバージョンアップ機,RMS-115はRMS-154のバージョンアップ機(*11),RMS-116はRMS-106のバージョンアップ機(*12),RMS-117はMS-17のバージョンアップ機,RMS-119はRMS-106の偵察型への改修機というように,いずれも既存の機体を改修,発展させた物であることがわかる。

 なお,RX-110だけは少々趣が異なる。
 ルナツー10番目のMSとして完成した,RX-110ガブスレイは,ジュピトリス系技術によって完成した可変MSであり,その技術ルートが明らかではないのである。脚部や腕部のスラスタ配置から考えるに,後の木星帝国の技術に近い意匠も見える。推論に過ぎないが,RX-110は,本来ジュピトリス系の機体で,PMXナンバーでもおかしくなかったのが,ティターンズの掌握を目指すシロッコが技術提供を行って,ルナツー工廠に作らせた物ではないだろうか。

コンペイトウ工廠

 ナンバー12は,コンペイトウ(旧ソロモン)工廠であるが,現時点では,RX-121ガンダムTR-1ヘイズルおよびその系譜に連なるT3実験機しかはっきりしていない。T3チームの使用した機体のみがナンバー登録されていることから,ティターンズの機体改修に用いられた,との結論を暫定的においておく。(*13)

ア・バオア・クー工廠

 ナンバー13は,旧ア・バオア・クー工廠である。このナンバーで登録されたMSは,RX-138ハンブラビ(*14),RX-139ハンブラビが相当する。開発ナンバーからさらなる機体の存在の可能性もあるが,RX-138がRX-139と同系統の機体であることから,バージョンアップのたびに型式を取得していた,と考えることも可能であるため,実際の開発機自体は少ない可能性も残っている。
 この工廠はゼダンの門と改称されたこともあり,ティターンズ用のMSの技術関連を開発していたことは間違いないだろう。しかし,その大元となるMSの系譜はRX-139だけだとつかみにくいのもまた事実である。

ペズン工廠

 ナンバー14は,ペズン工廠である。
 ここで開発された機体は,ゼクシリーズと呼ばれる機体群で,次世代の汎用MSを開発するというコンセプトで機体開発を行っていた(*15)。ゼク系列がどのMSの系譜に当たるかという明確な資料はないのだが,外観からするとMS-09系に近い印象を与える。
 また,武装や装備の交換により様々な戦場に対応するというコンセプトは,RX-81系に近い印象を受けるのである。このことから考えるに,実はRMS-108(この場合は,MSA-002としてだが)と同じコンセプトで開発された機体が,ゼクシリーズではないだろうか。
 なお,ペズン工廠は,ニューディサイズの叛乱に際して,爆破され失われた。

ニューギニア工廠

 ナンバー15は,ニューギニア工廠であり,ここで開発された機体が,RMS-154,RMS-156である。この機体は,RX-178の系譜に連なる機体としてプランニングされたとも言われ,ジャブロー後のティターンズの主たる拠点であったことから考えても,主力量産MSの自主開発を行っていた,と考えるのが適当であろう。
 RMS-154,156ともバーザム系の機体であり,基本的にはRX-178の技術スピンアウトがメインであった可能性が高い。

キリマンジャロ工廠

 ナンバー16は,キリマンジャロ工廠である。ここでは,RX-160,RX-160X,RX-166という機体が開発されている。
 これらの機体は,当初はティターンズにおけるガンダムタイプの開発が行われていたが,後にジュピトリス系技術が投入された,と考えて間違いではないだろう。特にRX-121でテストされたユニットが,ジュピトリスの持つ大出力スラスタの技術によりブラッシュアップされてRX-160が完成したと考えると,実にうまく収まっていると言えるのである。

グリプス工廠

 ナンバー17は,グリプス工廠である。
 ここで開発された機体は,RX-178,RMS-179などである。機体開発については,ティターンズの本拠であることもあり,純連邦系技術に偏っている。

ジャブロー工廠

 ナンバー18,19は,ジャブロー工廠である。
 UC0087/05/11の核爆発により,そのほとんどが失われたことから,この工廠における開発は,実はわずかな期間であったと考えられる。
 ここでは,RMS-118MD,RMS-192Mといった機体群が開発されている。
 しかし,旧来の連邦軍の本部であったこの工廠の位置づけは,どちらかといえば新規開発ではなく,既存の技術を応用した機体を拠点として登録されていない研究所,基地などから提示させ,それらを実際に研究開発するための施設であったのではないかと思われる。実際,ジャブローには数多くのMSVが配備されており,旧機種だから残している,というよりも研究のため集められた,と考えた方が無難であろう。(*16)

地球連邦系各種研究所

 拠点ナンバー制によって区分された各工廠は,比較的大規模な開発・生産施設を持つ工廠である。一方,各技術研究所でも独自のMS開発が認められていた。一年戦争末期にオーガスタ研究所で開発された「オーガスタ系」と呼ばれるMSに代表されるように,各研究所で研究された機体が,時に大型工廠での開発機の設計機を上回る新発想(*17)が投入されていることが多いためである。

 クラークヒル研究所(*18),オーガスタ研究所,オークランド研究所,ムラサメ研究所等々,様々な機関がこれらに参加しており,誕生した試作機も数多い。中には,量産配備まで行われた機体も存在しており,独自開発による多種生産が,この時期には好結果を生み出していたと言えるのだろう。
 こういった機関で開発された機体群として,NRX-044,NRX-055,ORX-005,ORX-012,ORX-013,MRX-002,MRX-007,MRX-008,MRX-009,MRX-010,MRX-011,といった機体が確認できる。

 クラークヒル研究所,オーガスタ研究所,オークランド研究所は,ニュータイプ研究とその周辺研究を行っており,MSもそれに準じた機体群が開発されている。
 現在ではオークランド系とされることの多いNRXナンバーであるが,NRX-044アッシマー,NRX-055バウンドドッグ,いずれの機体も可変機(TMA)である。NRX-044が後に一般パイロット向けとして量産されたのに対して,NRX-055は基本的に強化人間対応機(*19)として3機のみの建造に終わったという点が異なっている。

 オーガスタ系の機体であるORXナンバーは,ORX-005とORX-012,ORX-013ではその機体の開発経緯が異なっている。
 ORX-005ギャプランは,NRX-044とほぼ同じコンセプトで開発が行われた機体で,そのじゃじゃ馬振りから,パイロットを選ぶ機体となってしまった物である。一方,ORX-012は,ティターンズが極秘入手したアナハイム系ガンダムMk-靴離如璽燭鮓気坊造した機体といわれており,MSF-008の型式をもっていることからも,実質的にはアナハイムの機体をそのままオーガスタに移管した物と考えた方がいいだろう(*20)。また,ORX-013は,この012にMRX系サイコガンダムのデータをフィードバックした機体とされており,これら2機種とORX-005は全く別の系譜上にある機体と言えるのである。

 さて,ここで注目してほしいのが,ORX-005,NRX-044,NRX-055の機体構成である。
この時代既に機体各部へのスラスタの分散配置は当たり前のように行われているが,この3機種は機体構成に於けるスラスタの配置がほぼ同じなのである(*21)。これらの機体にはマグネットコーティングが施されているなどの共通項もあり,実のところ同一の機体(設計と置き換えてもいい)にそれぞれ異なったアレンジを加えた結果,あのような機体になったと考えられるのである(*22)。

 さて,そうなるとベースとなった機体はどういった機体だろうか。筆者が思うに,これもペズン計画の機体ではないかと思うのだ。

 顧みるに,ロザミアのギャプランとともにスードリに配備されたのは,MS-11アクトザクである。このMS-11は,少数ではあるが生産されオーガスタに配備されていたことから,他の機体も配備されていておかしくないのである。
 MS-17は,RMS-117として配備されたこともあり,これらの研究機関で発展型を開発する意味はそれほどあるとは言えない。同様にMS-11は,既にRMS-106として一定の成果を上げている(*23)。だが,MS-10に関しては,連邦軍に於ける系譜が見えないのである。
 実のところ,MS-10は,ツィマット系MSの集大成的な機体(*24)であることから,このデータを発展させた機体が連邦にも存在していたとしてもおかしくないのである。つまり,先に述べた3機種は,各部形状,スラスタ配置,生産設備,生産意図等,遠回しにであるがこれらMS-09系のデータが利用されている機体ではないだろうか。

 最後にムラサメ研究所についてだが,ここの目指す物は当初からはっきりしている。すなわち,ニュータイプ(強化人間)用MSの開発という点である。
 当初開発されたMRX-002は,RX-78NT-1の余剰パーツを用いて開発された機体であるが,既にビットの搭載を行うなど,思い切った設計となっている。(MSX-003ネティクスもコンセプト的には同一である。)また,MRX-007以降確認できるサイコガンダム系列は,その明確なコンセプトが旧ジオン軍のMSN-02に端を発しており,ムラサメ研の開発コンセプトに揺らぎがないことがわかる。

 いずれの研究所にせよ,開発した機体は,その当時の連邦軍フォーマットに則った形状といえるが,基本的な技術はジオン系であることは間違いない。逆に言えば,外観こそジム/ガンダム系の機体であっても内部構造はジオン系と連邦系のハイブリッドである機体が多くを占めていたということである。

グリプス戦役以降のMS開発

 グリプス戦役は,地球連邦の体質を大きく変えた争いだった。この結果主導権を握ったのはエゥーゴであったが,エゥーゴにもまたアキレス腱があった。すなわち,アナハイム・エレクトロニクス社そのものである。
 エゥーゴのスポンサーであったアナハイム・エレクトロニクス社は,この時点で地球連邦軍のスポンサーたり得る立場にも立ってしまったのである。この結果,連邦の腐敗が進んだことは先に述べた。

 これはMSに関しても同様で,以後連邦軍が独自に開発したMSは,姿を消すのである。基本的にアナハイム・エレクトロニクス社の(名目上は社内コンペティションをクリアした)機体を採用していくこととなる。戦乱そのものも減っていったため,アナハイムとしては連邦軍に武器を売りつけるしか無くなっていくのである。これによりますます癒着が進んでいくのである。

 転機が訪れるのは,宇宙世紀100年代に提言がなされた「MSの小型化」である。「高額なMSを売りつける」だけの企業となっていたアナハイムは,結果的にサナリィに敗れてしまう。これにより,アナハイムの及ぼす力が軽減された連邦は,さらなる迷走を続けることになるのだ……。


 註釈

 本文中の注釈である。
 記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。

(*0)

 これは,MSジェネレーションにおける,GT-FOURの開発経緯から空軍と宇宙軍の確執を述べたものである。
 その点で言えば,GT-FOURという異端児が,一年戦争時に登場していたというオーパーツぶりも,まぁ妥協出来なくもない(笑)

(*1)

 ここでは「フラッグシップ機としてのガンダム」の意味合いで用いている。
 それだけ,宇宙軍が開発したRX-78(とそのパイロットのアムロ・レイ)の活躍が大きかった,ということなのである。
 ちなみに,「各軍それぞれのガンダム」とは,マスターグレード・ガンダムNT-1のインストなどに記載されているG-4計画機だと想定してもらってかまわない。

(*2)

 FF-S3セイバーフィッシュは,元々高々度迎撃機といった機体であるが,宇宙軍と空軍のカバーエリア(大気圏上層)の考え方の違いからトラブルとなり,結果的に宇宙軍が制式採用したものである。
 空軍仕様も存在するが,後にジャブロー防衛に運用されていたのが,宇宙軍仕様だったことを考えると,空軍仕様は極めて少数の建造だったと思われる。

(*3)

 当然といえば当然である。公国軍が開発したMS-06までの機体は,連邦軍の旧来の兵器体系に対するカウンターウェポンである。それを(ある程度は想定されていたとはいえ,)連邦が開発したMSに対抗するための運用を行っている時点で,実は戦術体系として誤った運用なのである。(実は,この点を理解した上での考察を述べている書籍等を見た事がほとんどない。おそらく「人型」という兵器の特性から,対MSが「考慮されずに」ザクにも当てはめられているのだろうと考える。)

 だが,逆に言えば,それだけMS-06の汎用性が「ずば抜けて高かった」ともいえるのだ。この汎用性の高さが兵器運用を見誤らせた可能性については,いつか検証してみたいと考えている。

(*4)

 この点は筆者の完全なオリジナル解釈である。
 MSVの発表当時に,MS-06のバリエーション機は原則として枝番処理を行われていたのだが,RGM-79のバリエーション機は,単に「RGM-79」とくくられていた点が多かったのである。しかし,時代が進むにつれ,これらにも独自の型式番号が与えられていったのである。これらの型式番号には,同じナンバーが重複している物もあり,こういった点をうまく解釈で逃げるためにこのような表記を行った。

(*5)

 これは実は重要な点である。
 宇宙世紀83年時点で,アナハイム・エレクトロニクス社にガンダム開発計画の外部委託は行われているのだが,実際にそれ以外のMSの生産委託が行われているかというと,実はそれほど資料がないのである。
 連邦軍のMSは,多くがジャブローやルナツーなどの連邦軍施設での生産であり,軍が独自に生産設備まで有していた,ということになるのだ。ところが,グリプス戦役期では,アナハイム・エレクトロニクス社の生産がかなりの規模に渡っており,わずか数年で大規模委託が行われたことになるのである。この点から考えると,やはり拠点ナンバー制に移行した時点で,こういった委託が可能になったと考えた方が無難であろう。

 実は,このように想定するともう一つ都合のいい事実がある。
 グリプス戦役後しばらくして,連邦軍の型式番号は従来の型式番号体系に戻っている。その理由が説明しやすくなるのである。
 グリプス戦役時に,連邦軍のMS開発工廠のうち,ジャブローは壊滅的打撃を受けており,同様に,ペズン,ア・バオア・クーも失われている。だが,逆に言えば,それ以外の工廠は無事だったということである。(キリマンジャロも大打撃を受けたが,その後復興されたとなっており,その点では失われた,とは言い難い。)
 それでありながら,旧来の型式番号体系にもどったのは何故か?
 以下の理由が考えられる。

 1.ジオン系MSの検証が一段落付き,新規MSの開発ペースが落ちた
 2.アナハイム・エレクトロニクス社へのMS発注にシフトした為,工廠での開発が減った
 3.エゥーゴが主導権をとった為

 実のところ,1,2の理由というのは,拠点番号制を廃止するには充分な理由とは言い切れない。単に,アナハイムに新たなナンバー(失われた,13,14,18,19のいずれか,或いはリック・ディアスで用いられた09)を割り振るだけで充分なのである。
 やはり,最大の理由はエゥーゴ寄り政権となったことではないだろうか。
 鑑みると,拠点ナンバー制にはティターンズの影が見え隠れする。それを嫌った政権が,旧来の型式番号体系にもどしたと考えた方が納得しやすいのである。

(*6)

 蛇足ながら,ここはこれまでの各節の論説に絡めた点でもあるのだ。
 以降に続く各工廠ごとの開発機を検証していくと,ジオン系MSの比重が大きくなっていることがわかる。特に,グラナダなど旧公国軍系の工廠では,その傾向が強い。しかしながら,これらジオン系MSが増えていると言っても,そのほとんどでは基本的システムは連邦系技術とのハイブリッド機となったものが多いのである。この点から考えても実はツィマット系MSの方が,連邦製フレームに近い技術が投入されており,相性がよかった物と思われる。

(*7)

 ここでゲルググ系の話題を出していないのは,ゲルググ系の生産がグラナダではそれほど行われていなかったのではないかと想定したためである。ゲルググの開発後は,生産可能な施設ではゲルググへのラインの転換が行われたとされているが,グラナダではそれほどラインが存在しなかったのではないかと考えているからである。

 最大の理由は,「ガンダム戦記〜宇宙,閃光の果てに」において,MS-11が登場していることにある。ここまで論説を展開してきたように,ペズン計画機は劣勢の公国軍の切り札であり,MS-11はその中でもジオニック社系MS-06の生産ラインの転用で生産可能な機体としてプランニングされた物である。この機体が(マレット機が試作機であったとしても)開発可能なレベルであったなら,生産ラインをMS-14よりはMS-11に振り替えた方が性能と生産時間のトータルバランスが取りやすいはずである。また,劇中にリックドムは多く登場したが,ゲルググがあまり登場しなかった点もこの判断のベースになっている。

(*8)

 ホビーハイザックの原型となったと思われる機体としてあげた物であり,正史には確認できない。

(*9) RMS-114ジーム(GEEM)

 出典はTOPガンダム。
 とりあえず,非公式ながらも考察にそれほど影響を与えないため,投入している。

(*10)

 近藤版バーザムの型式。
 考察に「都合がいい」ために導入(^^;)

(*11)

 つまり,近藤版とTV版のデザインの差異が後のカトキ版バーザムへと連なるわけで,これを改修機と見たのである。

(*12)

 以前掲示板での考察において,RMS-116というのはYRMS-106をルナツーが独自に強化した高性能版ハイザックである,という説を提示したことがある。これは,RMS-106CSとYRMS-106,RMS-116Hの形状の似た部分から導き出した説で,RMS-106CSは,RMS-116のグラナダにおけるカスタムアップ機ではないだろうか。
 これらについては,第4章に掲載されているハイザックの項を参照のこと。

(*13)

 一部には,YRMS-106+BL-85XがRX-122という型式を暫定的に与えられていたという説もあるが,これははっきりしない。

(*14)

 MG誌の作例。この機体に,シロッコの技術が合わさってハンブラビが完成したと考えると面白い。

(*15)

 と,いいながらもRMS-142のような異形のMSが誕生することからも,当時の連邦のMS技術が,ジオン系技術の消化に賢明で,迷走していたことがわかるだろう。

(*16)

 これはMS-07Hが少数とはいえ生産されたことなどから考えても間違いないかと思われる。ジャブローに残されていた機体は,いずれも小改修が施されており,単に旧式だからもってきたというよりは,データ収集しながら改修していた,と考えた方が無難である。また,後に配備が見られるMS-06MマリンハイザックやMS-06Kハリオ配備機などはジャブローでそういった検証の後改修,配備された可能性もある。(この場合,暫定的ではあるが,RMSナンバーが存在していた可能性も否定できない。)

(*17)

 この点では各工廠は技術開発よりは量産向けの機体開発に進むのが通例であり,新機種が登場する土壌にないことがわかる。つまり,大規模化してしまった工廠では効率の良さが求められるため,従来の設計ライン,開発ラインが変更されることは稀となってしまうのである。このため,どちらかといえば技術発展に主眼がおかれ,技術革新は二の次になってしまうのだ。
 アナハイム・エレクトロニクス社の技術陣が,この当時優れていたのは各工場ごとに競い合わされた結果,様々な新技術を誕生させる素地があったということなのである。

(*18)

 Zガンダムを10倍楽しむ本において,当初ギャプランの開発元とされた研究所。単に名称を出しただけなので,深い意味は無い。

(*19)

 実は,この点がジェリドの最終決戦時の強化人間説の根拠の一つである。

(*20)

 すなわち,MSF-007などを含む「広義のZ計画」の機体の一つと考えた方がいいということである。この考え方は,実はそれほど無理はなく,技術開発者の流出が当時はかなりあったということと,アナハイムが連邦系技術の入手の為に,敢えて新鋭機を持ち込んで開発を移管したという可能性も指摘できる。

 実際,これを示すのがガンダムMk-靴領磴世噺世┐襪里澄
 ガンダムMk-靴蓮に寨茱謄ターンズの機体として描かれたものだが,紆余曲折があって,設定上はエゥーゴの機体となっている。だが,様々な作品で描かれる場合,その多くがティターンズ系量産機として登場するのである。
 ガンダムMk-靴離戞璽垢箸覆辰織▲疋丱鵐好疋ンダムは,背部の構成がMk-靴醗曚覆辰討い襦淵▲疋丱鵐好疋ンダムの場合はスラスターではなくウエポンラック)が,基本的な機体構成は同一である。
 つまり,アドバンスドガンダム→MSF-007ガンダムMk-掘淵ンダムMk-兇離如璽織丱鵐あたりに断片的な情報があったと推測)→ティターンズへの流出→小改修の上量産(IRON HEART版Mk-/少々パラレルだが,サイド・ストーリー・オブ・ガンダムΖ,ジオンの再興版)→強化改修(RX-166イグレイ),といった変遷を経たのではないだろうか。
 同様にMSF-008は,量産型サイコガンダム系にMSF-007の技術導入を行った機体だと想定される。

(*21)

 実は,アッシマーとギャプランでは,MA形態時のパーツ配置もほぼ等しいのである。メインスラスタが,アッシマーの場合は脚部,ギャプランの場合は腕部ブースターバインダである点が異なるが,機体構成はいずれも同一なのだ。

(*22)

 アッシマーは安定飛行のためのリフティングボディを採用したための円盤型,ギャプランはブースターバインダによる高機動性と追加ブースターによる高々度迎撃目的のための形状,そしてバウンドドッグは元々水中向けMSとしての開発が行われていたことからのMA-07のデータ採用による形状,ということである。

(*23)

 既に一定のデータ取りを終わらせたこともあり,機体自体の重要度は低下していたこともあったのでロザミアとともにスードリに配備されたものと思われる。

(*24)

 MS-17は,表向きジオニック社とのハイブリッドであるため,ここではこのように表記している。


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最終更新時間:2011年08月15日 17時31分38秒

脚注