トップ 差分 一覧 Farm ソース 検索 ヘルプ ログイン

考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(4-6)

お願い

  ■検索等で初めて来訪した方は,注意書き等を必ずご覧になってください。
  ■Wiki項目への直接リンクは避けるようお願いします。→<必読>  頻繁に項目変更が行われる関係上,直リンクはエラーのもととなります。
  ■あまりにマナーの悪い人がいましたので,一部項目にアクセス禁止処理を行いました。
  ■極めて短時間で集中的アクセスを行ってるIPについては,終息の目処が立たなかったためアクセス禁止処理を施しました。解除申請は本家掲示板にて。

第2章 宇宙世紀の技術

 宇宙世紀の概要については,前章で簡単に説明を行った。本章では,これら時代時代に応じた技術的な面を概要と詳細の形でまとめていきたい。また,各陣営ごと,開発メーカーごとのMS開発に関する技術系譜等も本章で扱う。
 特に,宇宙世紀初期と記録の残る終盤である,200年代ではその世界環境が大きく異なるため,これらも含めて技術論という形でまとめておく。

 なお,各モビルスーツの詳細データ等,個別考察については第4章以降にまとめているので,そちらを参照してほしい。

 2-4 モビルスーツの開発メーカー


 本項では,ジオン公国軍及び地球連邦軍におけるMSの開発メーカーについてその概要と詳細をまとめている。また,関連してMSの爆発的な進化が続いたグリプス戦役期頃までのMSの開発に関わった企業や組織等についてもまとめている。(企業ではなく,軍主導で開発が進められた機体群も存在するため,こういった表現になっている。)
 この時代,MSという機動兵器の基礎フォーマットが確立した時期ともいえ,以降のMS開発はこの成熟が続いていった時代と区別することが可能であり,それだけに様々なメーカーがその技術を競った時代だとも言えるのである。また,メーカーの違いはMSのコンセプトの違いとも言える時期であり,こうした時代を経て,MSという兵器は完成度が高められていったのであろう。そのため,この時代のMSは,初期にMSという兵器が登場した時期から,様々な用途別,機種別分類が確立するまで,非常に短期間で成熟しており,(一般的には兵器の成熟には非常に長時間がかかるものであるのだが)わずか20年ほどで第1〜第5世代まで急速に発展している。(ただし,基礎的フォーマットの確立は第2世代でなされており,以後の機種は多くがこの第2世代MSをベースとしているのは注目すべき点である。)

 第1節から第7節までは,これら一年戦争前後から第2次ネオ・ジオン戦争というMSが急速に発展した時代のMS開発メーカー,組織を重点的に解説している。また,宇宙世紀100年以降に登場したMS開発メーカーに関する概要や詳細については,代表的なものを第8節以降にまとめている。


 2-4-(6) アナハイム・エレクトロニクス


 アナハイム・エレクトロニクスは,一年戦争後に急成長してきた軍需企業である。
 一年戦争時に,既に連邦との軍需企業としてのつながりがあったとの資料も存在するのだが,少なくとも「軍需企業」として大きく成長したのは,一年戦争後に解体されたジオニック社を吸収してからであろう。
 また,様々なM&Aによって企業グループそのものが肥大化し,グリプス戦役期には,軍需産業の多くの実権を握るまでになっていた。さらにいえば,グリプス戦役によって連邦軍の中枢にまでその手を伸ばし,結果的に連邦軍すら(裏から)コントロールするほどの企業になっていったのである。
 その結果,連邦政府,軍だけではなく,「アナハイムという企業そのもの」も腐敗が進み,宇宙世紀120年代には(企業規模としては大きいままであったが),その威光はかなり霞んでしまっている状況であった。(*0)

 要するに,アナハイム・エレクトロニクス社は,「大きくなりすぎた」企業の一つであり,一部のやり手経営者が失われてからは,企業そのものが麻痺した状態が続いていたと考えられる。記録では,宇宙世紀150年代にもその工場や施設は大きかったことは伝わっているが,その後の企業としての在り方についての記録は残っていない。

AE社のMS開発(グリプス戦役)

 繰り返しになるが,アナハイム・エレクトロニクスは,一年戦争以前から存在する企業である。しかし,軍需に大きく食い込める企業へと変貌したのは,やはり一年戦争後といっても過言ではない。それはすなわち,ジオン系MS技術を自社の物としてから,ということなのである。
 戦後,アナハイムが開発したMSで真っ先に名前が挙がるのがハイザックである(*1)。結果的に「そこそこ」の評価を得ることのできたハイザックによってアナハイムは,連邦のMSを生産するという足がかりを得たことは間違いない。

 では,次にアナハイムによって開発された機体は何だろうか?
 意外と思われるかもしれないのだが,実はリック・ディアスなのである。

 無論,他のMSの開発は行っていたとは思われるのだが,実質的にこれらが連邦に食い込めていたかというと,そうではないのだ。
 アナハイム・エレクトロニクスは,デラーズ動乱時にガンダム開発計画に加わっていたが,様々な制約が存在した計画であり,また,後に開発計画そのものが抹消されてしまったという悪条件の重なった状態であり,連邦軍そのものから評価されたとは言い難い状態であった。また,デラーズ動乱時に一部管理職がデラーズ・フリートとの繋がりがあったということから,ガンダム開発計画の抹消に伴い,これらの技術情報などの漏洩を起こした場合,莫大な違約金(それも会計に計上できない簿外支出として)を支払わなければならない状況となってしまっていた。
 そのため,連邦軍内部にはアナハイム・エレクトロニクスの技術面を理解している者もいたのだが,技術面ではなく,政治面から一部連邦官僚からは疑問の眼差しで見られていたのである。さすがにこの状態ではガンダム開発計画によって得られた情報を流用した機体というのは難しい,となると既存の技術を発展させた機体を開発するというのが最も現実的な考え方となるのである。
 こういった状況だと新型機の開発では,全く新規の技術開発を行っている余裕はなく,既存の技術系の発展型の機体が必要となるのである。
 自らが開発に関わったガンダム開発計画の技術が使用できない状況となってくると,これに類する技術も基本的に封印せざるを得ず(*2),結果的にジオン系技術での新型機種開発へとなってしまったのである。また,この際にベースとなる機体群にも制約が生じてしまったと考えられる。

 アナハイム・エレクトロニクスが大きく発展する契機となったのは,解体されたジオニック社を吸収したことである。このジオニック社が開発したMSで,最も性能が高かった機体はいうまでもなくMS-14ゲルググである。
 しかし,MS-14はその多くが連邦軍に接収されていること,ガンダム並ともいわれる性能を誇ってはいるが,整備面で連邦軍に売り込むには不利が生じること(*3)などから,検討候補としては外されたのではないだろうか。(もちろん,これから先連邦軍がジオン系MSを参考にすることはあっても,そのシステムを積極的に採用するとは思えないという状況もあったはずである。)この様に考えていくと,実のところジオン系MSをベースにした発展型機を開発するとしても環境的にはかなり厳しい状況なのである。
 これらの理由から,アナハイムが新型機を開発するとしてベースとなる機体群は,どうしても連邦系になってしまうのだが,連邦系の技術も自らが関わったガンダム開発計画に関係した技術は流用が難しい……,という状況であり,手詰まり感がある。

 ところが,実際にはそれを可能とする機体群が存在している。ハイザックの開発において参考にされた機体,MS-11アクトザクを含むペズン計画の機体なのである。
 ペズン計画機は,一年戦争後にペズンが連邦軍によって接収された後,連邦軍の管轄下に置かれ,これらをベースとした機体開発が行われている。最も高性能なハイスペック機であるMS-17ガルバルディをベースとしたRMS-117ガルバルディβである。
 MS-17は,戦後連邦軍の間でも評価が高く,ほとんど原型機のまま量産に移行(*4)している。同様にMS-11は,連邦軍での評価の後,RX-106として承認され,アナハイム・エレクトロニクスの手によって量産先行モデルとしてYRMS-106が生産されているのである。つまり,ペズン計画機は,多少の手の入れようによっては充分連邦軍で運用可能な機体であるということなのだ。同様に,他のペズン計画機にもその可能性があると考えられるのである。

 つまり,ペズン計画機は先のツィマット社の項で説明したとおり,事実上ツィマット社の開発機に近い機体である。また,その基幹システムはツィマット社が開発した「連邦系MSで採用されているフィールドモーターシステムに準じた」システムで構成されている(*5)のである。残るペズン計画機で,汎用性の高いMSといえばMS-10ドワッジが残っている。このMS-10は,ツィマット社の開発機であるMS-09系の発展型である。つまり,ベースとなるMS-10そのものが連邦軍の接収によって失われていたとしても,開発に関連した機体群から発展型の開発は可能であると考えられるのである。

 MS-10の名称である「ドワッジ」は,元々MS-09系の次世代機に与えられる名称である。この名称は,先に砂漠戦タイプのG型やH型に与えられるなど,開発計画によって複数の機体に与えられているのが特徴である。MS-10にも同様の理由でドワッジの名称が与えられたのであろう。
 ところが,さらに上を目指した機体として「ドワス」という機体が存在しているのである。MS-09系の次世代機としてプランニングされた機体を更に上回る機体群としてのプランが存在していたという事実は,一部にしか知られていなかったのであろう。実際,このドワスとされる機体は,MS-09Sという空間戦闘型の機体とMS-09Fとされる局地戦型の2種しか確認されていない。それも,極めて限定された資料にしか存在していない(*6)のである。

 これらの機体は只でさえ配備数の少ない後期MS-09型であるF型の発展型と考えられ,なおかつ,公国軍が進めていた統合整備計画などからも外れた機体である。このことから考えるに,おそらくツィマット社が独自に進めていた改良プランの一つ(ジオニック社のMS-06F2のようなもの)ではないだろうかと思われる。
 一年戦争後に会社は存続したとはいえツィマット社も新規の開発については制限を受けている。つまり,技術者にとってはツィマット社に在籍するメリットが乏しくなっているのである。新型機の開発できる環境をアナハイムが提供したため,ツィマット社からアナハイムに移籍した技術者も多かった。こういった技術者の中にMS-09系の開発に従事していた人材がいたのであろう。MS-10は連邦軍に接収されており,その機体自体はアナハイムが入手するのはかなわなかったであろう。だが,MS-09SなどF系の機体とそのデータは迎え入れたツィマット系工場と技術者によって十分実用になるだけの物があったのである。また,アクシズからの帰還者(*7)によって,かつて連邦がMS開発に於いてアドバンテージをもっていた部分の一つである装甲材について新たな技術が導入されることとなった。その装甲材こそ「ガンダリウムγ」である。これにより,強度はかつてのルナチタニウムクラスでありながら,軽量且つ柔軟性に富む装甲材が手に入り,少なくともこの分野ではアナハイムが連邦の先を行ったと言える状況となったのである。

 こうして開発が進められた新型MSで最初にロールアウトした機体であるRX-098プロトタイプリックディアス(*8)は,各部の整理こそ行われていなかったが,量産型MSとして既存のMSを凌駕する性能を持っていた。しかし,この機体はエゥーゴ向けの機体であったため,連邦政府向けにはダミーの型式番号であるRMS-099(*9)が提示されることとなった。
 ロールアウトしたRMS-099リック・ディアスは,当初「ガンマガンダム」と呼称されていたが,その外見は一見しただけではベースとなったMS-09系とほとんど変わらない外見であった。しかし,様々な新技術の導入により,当時のMSとして高い性能を持っていたのである。これは,ベースとなったツィマット系MSの内包するポテンシャルの高さがある意味証明されたと言えるだろう。
 こうした機体のポテンシャルを見たエゥーゴ上層部は,この機体の量産を依頼したのである(*10)。

 ただ,RMS-099が量産に移るとやはり様々な面で不都合が生じたのも事実である。まず,RMS-099という機体が,どちらかといえばベテランパイロット向けの機体であった(*11)こととコスト面,そして,何よりもMS部隊の編成における問題点である。
 一年戦争では,連邦軍のMS部隊の編成は,近接戦闘型MSと支援型MSの混成部隊を編成するという形態が主であった。これは,実のところ大規模戦闘でない限り,最もバランスのとれた編成といえ,後のMS部隊編成においてもかなり参考となっている。多くのMS部隊が,ビームライフルとビームサーベルによる中距離/近接戦闘武装と,それをサポートするバズーカなどを装備した支援武装に分かれているのである。
 これは,エゥーゴにおいても同じような状況が求められており,実際量産機としてのMSを発注していたのである。その機体が,MSA-002とMSA-003なのである。

 MSA-002という機体は,元々エゥーゴ向けに開発が進められていた機体であったが,ガンダムMk-橋奪事件に端を発するエゥーゴとティターンズの戦闘状態において,嫌疑をかけられたアナハイム・エレクトロニクスが,小改修の後にティターンズにRMS-108として提供をした機体である。
 しかし,このRMS-108という機体は実に様々な評価がある機体としても有名な機体なのである。
 アレキサンドリアに引き渡された6機は,RMS-106の後継機として提供され,RMS-106に比較して高性能であったことと,運用したティターンズ兵の評価により,比較的高評価を得ている。その結果,さらなる機体がティターンズから発注される(*12)わけであるが,その後のRMS-108の評価は芳しい物ではない(*13)。

 実はこの評価の差は,当初提供された機体と,後に量産配備された機体がまさしく別物であるということをあらわしているのである。実際,マラサイのスペックを調べるとおもしろいことに気がつく。頭頂高の数値が2種類あるのである。これはRMS-108の中身,すなわちフレーム構造が2種存在していると言うことではなのである。また,資料[7]には,RMS-108は,「RX-81の系譜に連なる機体」という新たな解釈が登場している。この解釈は,これまでの資料類では見ることの出来なかった物であり,明らかに異端である。しかしながら,これを初期の6機のみと限定して考慮すると事情は変わってくる。初期の6機のみが「RX-81の系譜に連なる機体」であると解釈してしまうのである。(*14)つまり,後に納入された機体が,RMS-106の後継機であったのだ。

 RX-81という機体は,戦時中に「RX-78の完全量産型(*15)」としてプランニングされた機体だが,実際には一度白紙撤回されている。その後プランニングされた機体は,「基本フレームを同一に,各種装備により様々な運用が可能な機体」というMSになるはずであった。この機体は,プランニングのみとも,若干数が試作されたとも言われる(*16)が,いずれにせよ基本的な構造はかつての連邦系技術によって成り立っている機体である。如何にしてこの連邦系技術がアナハイムに流れ込んだのかは明確な資料はないが,ガンダム開発計画において連邦から提示された技術のなかにRX-81プランが存在していた可能性もある。(この点については,ハービック社など連邦系の企業も吸収しているため,そこから得た技術であったことも考えられるし,RGM-79Rの生産を請け負っていた可能性もあり,そこから得た技術ということも考えられる。)

 いずれにせよ,「RX-78ガンダムの量産型」をアナハイムが製造できるかという点では,まだまだ環境的に無理であると思われるので,この「RX-81の系譜」というのは,MSA-002が「RGM系MSの発展型で,基本フレームをベースに各種装備によって様々な運用が可能」な機体としてプランニングされていた,ということを指していると思われる。

 ここでちょっと考えてほしい。「基本フレームは同一で,各種装備可能」ということは,「装備によっては全く別種のMSになりうる」ということなのだ。
 筆者は,MSA-002,MSA-003という機体を,RMS-099の技術でRGM-79R系を発展させた機体と見ている。すなわち,これらの機体も先述のツィマット系MSと連邦系MSのハイブリッド型MS(*17)と言うことである。このうち,MSA-002が小隊長などに与えられるハイスペック機で,どちらかと言えばよりRX-81寄りの様々なパイロットに合わせた機体としてプランニングされた物で,MSA-003が一般兵向けのローコスト機という考え方でプランニングされた物ではないかと思うのである(*18)。

 しかし,先に記したガンダムMk-橋奪事件の影響で,急遽対策をとらねばならなくなったため,既にエゥーゴへの配備が始まっていたMSA-003ではなく,MSA-002の外装を変更し,偽装することでティターンズに提供したのではないかと考えられるのである。この際,MSA-002が基本フレームのみ共通で装備を変更できることが短期間での改修を可能とし,さらにアナハイムがT3チームに提供したRX-107系(*19)の外装を施すことで,このRX-107の量産配備機といった売り込みをかけたのではないかと思うのだ。
 もちろん,中身はMSA-002であり,本来ハイスペック機を想定していたため,ティターンズ側の評価も比較的高くなった。しかし,その後に配備された機体は,RMS-106の生産設備を流用した「ちょっと性能のいいRMS-106」程度の機体でしかなかったため,評価が低いのである。(筆者の想定であるが,後にティターンズに納入されたRMS-108は,ルナツーが開発したRMS-116系ハイザックと同じ程度の機体であったのではないかと考えられる。)また,MSA-002ベースのRMS-108もその後も混在していたため,RMS-108は各種スペックにばらつきがでたりするなどの非常に評価が定まらない機体となってしまったのではないかと考えられるのである。

 一方,計画が消えたMSA-002に代わって,アナハイムがエゥーゴ向け高性能機(*20)のベースとして選んだのはRMS-099であった。これは,RMS-099の歩留まりが安定したことと,コスト面での下落などが見込めるようになったと言うことが大きい。また,ティターンズが配備したMSの性能が全般的に高性能化していった,ということも挙げられるだろう。
 この結果,エゥーゴの主力にはほとんどRMS-099が配備されることとなり,さらなる機体の開発も進められることとなった(*21)。例えば,MSA-004KなどはMSA-003の強化型であるMSA-004の砲撃戦仕様といわれるが,その外見はどちらかといえば,RMS-099にMSA-003的な意匠を加えたに過ぎない。また,RMA-099自体の強化案も数多く提出されており,実質的にRMS-099が主力であったことがわかるだろう(*22)。

 アナハイムでは,これらの機体以外にもいわばスペシャル機を多数生産している。
 これについてはまた別に語ることとしよう(*23)。

AE社のその後

 アナハイム・エレクトロニクスは,グリプス戦役においてエゥーゴに加担したことがきっかけで,最終的に地球連邦軍の中枢にまでくい込んでいった。エゥーゴが連邦軍(連邦政府)の主導権を握ったことで,そのスポンサーとしてのアナハイム・エレクトロニクス社は,連邦軍の動静すらコントロール可能な立場になったのである。
 これ以降,アナハイム・エレクトロニクス社によるMSの独占状態が加速することとなる。第1次ネオ・ジオン戦争時には,アクシズ(ネオ・ジオン)のMSに対抗するために連邦軍には積極的に自社のMSを売り込み,ネオ・ジオン側には技術協力等を申し出る,という文字通りの「死の商人」であった。だが,アナハイムの企業活動はその後も継続されていく。

 第2次ネオ・ジオン戦争時には,独自の生産施設を持たない新生ネオ・ジオン軍のMSもアナハイムが生産を行っていた。その一方で連邦軍の外郭軌道艦隊であるロンド・ベル隊のMSも製造するといった状態だったのである。この事例はアナハイムの各事業部は独立採算制を取っていたことが理由の一つではあるのだが,一歩間違えば企業そのものに大きなダメージを与えかねない様な事実である。
 だが,これすらも見逃されるほど連邦軍内部へのアナハイム社の影響力は大きくなっていたのである。

 アナハイム社の影響力は,宇宙世紀100年頃にそのピークを迎えるが,その後は状況が変わってくるのである。連邦軍の諮問機関であった海軍戦略研究所が行った提言によって,MSの小型化がその既定路線となり,アナハイム社も否が応でもこれに対応しなければならなくなったのである。それまで自社で製造したMSをただ売りつけるだけで良かったアナハイム社は,MSの小型化に対してそのノウハウの蓄積が遅れ,結果的にサナリィの躍進を許してしまうこととなった。(*24)
 これに対して,様々な合法・非合法な手段で,威信回復に奔走したアナハイム社ではあるが,様々な新技術の開発に関しては,他の後塵を拝するようになってしまったのである。
 こうしてアナハイム社の我が世の春は終わりを告げる。しかし,その巨大企業としての側面は,他の企業にない大きな生産力という武器があり,これ以降も久しくアナハイム社は存続を続ける。しかし,かつてのような栄華を誇ることはなかったと言われている。



 註釈

 本文中の注釈である。
 記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。


(*0)

 アナハイム・エレクトロニクス社の衰退は,これまでサナリィという競合企業の出現が主な原因である様に考えられてきたが,実のところ,それだけではUC0100年代に急速にその影響力が低下していった理由が弱いと言えたのだが,機動戦士ガンダムUCでは,その点もまたフォローされている,といえるだろう。
 アナハイムという企業が,如何にして巨大化してきたかを示すガンダムUCでの記述は,逆にアナハイムが衰退していく理由を示したことにも等しい。
 ことにラプラスの箱が開示され,マーサ・ビスト・カーバインが拘束された事実は,アナハイムという裏で牛耳ってきた組織の衰退を暗示するには充分な内容であった。

(*1)

 枠外で語る形になって申し訳ないのだが,ハイザックというのは開発元が諸説ある複雑な機体である。開発元には,連邦説とアナハイム説が存在しているが,実は,これを一挙に解決する方法がなきにしもあらず,といったところなのだ。
 様々な資料においては,MS-06系に連邦系の技術を導入したのがRMS-106という表現が多いのだが,これをそのまま額面通りに受け取らず,少々アレンジしてみてはどうだろうか,ということなのである。

 RMS-106は,RX-106という試作機とYRMS-106という先行量産機が存在する。元々の出仕については,Wikiの項目を参照していただきたいのだが,簡単に言えば前者はプラモデルが初出で,後者は雑誌が初出である。
 近年,「ADVANCE OF Ζ〜ティターンズの旗のもとで」において,後者YRMS-106が再び登場したことで,このRMS-106の開発経緯がクローズアップされることになったのである。これらの詳細については,別章で語るハイザックに関する節を参照していただきたい。

(*2)

 連邦軍の最高機密として関わっていたガンダム開発計画の技術流用が不可能である場合,軍需に食い込めるかのような新型機の開発を行う場合,「連邦系の機体を開発した」場合に,ガンダム開発計画の技術流用ではないかとの,疑念を持たれかねないため,ジオン系の機体を開発せざるを得なかったのではないか,の意味でこうまとめた。

(*3)

 ゲルググは確かに高性能な機体ではあるが,その発展型を開発しても技術面での優位性が望めないという意味である。
 開発した機体を連邦軍に売り込みをかけようにも,「ガンダム以上」の機体を同じように連邦軍系の工廠で開発される可能性が高いこと,整備面で既存の設備を流用したい連邦軍の事情に向かないこと,から連邦軍に売り込みをかけても採用される可能性が低いということが言えるだろう。
 特に整備面では,連邦軍側にこういったジオン系MSの整備を行えるだけの土壌が無く,アナハイムの独占的な状況になりかねない。これは,先述した様に政治的に疑念を持たれている状況ではデメリットにしかなり得ないのである。

 実際,様々な考察を見ると,この点に配慮した記述が思った以上に少ないことに驚かされる。ハイザックという機体が,「なぜMS-14の系譜ではなくMS-06の系譜なのか」という根本的な問題に答えを出しているものが少ないのだ。
 様々な記述をみれば,戦後MS-14のパーツが工廠に存在していたことは匂わされている。(例を挙げれば,MS-14Cなどである。)が,しかし,これらを利用してMS-14系の機体が積極的に開発されたという記述は見られない。
 このギャップにどういった解釈を行うか,が戦後MS開発に対する一つの答えとなろう。

(*4)

 実質的にどの時期にRMS-117が量産に入ったかは不明であるが,ハイザックとそれほど時期的差は無いだろう。あるいはハイザックよりも先行していた可能性もあるのだ。
 ガルバルディは,連邦軍での生産に際して,ほとんど手を入れられなかったとされている。外装の変更(これも,一説には,B型と呼ばれる機体からほとんど変更されていないともされているのである),全天周囲モニター/リニアシートの導入などといった,戦後MSの標準化が行われただけであり,完成度的に高い機体であったMS-17が量産されたのは,ペズン計画機であったからであろう。
 また,この点からMS-14系の機体が連邦軍で採用されなかった理由も明かである。つまり,MS-14系の機体を発展させるよりも,より連邦軍で生産・運用がたやすいMS-17系が選択された,ということなのだ。


(*5)

 この点がハイザックを語る上で重要なポイントとなる。

(*6)

 ドワスは「1/144 フルカラーモデル リック・ドム」のインストラクションとこれを子引きした「ガンプラエイジ」にしか記述が無く,ドワス・デザートは,模型情報に連載されたF.M.Sにしか記述がない。(ドワスは,ガンダム事典Ver.1.5でようやく多くの人が目にすることが可能な媒体に掲載された。)
 模型誌のオリジナル記述や筆者WikiなどWeb媒体の記述なども上記のいずれかがベースなのである。

(*7)

 要は,シャアのことだが,この帰還時期が今考えると,実に絶妙な位置なのだ。
 UC0084/09/21というのは,ティターンズが結成され,なおかつ30バンチ事件の前である。エゥーゴ向け新型機のアナハイムでの開発において,実に絶妙な時期だと言えるだろう。

(*8)

 筆者の考えだが,このRX-098という型式は,エゥーゴが連邦内部での主導権を得た後に遡って登録した物であろう。
 RMS-099が偽装ナンバーであり,真のナンバーがMSA-099であったように,斬新な機体であるはずのRX-098を表に出すはずはなく,グリプス戦役後,「実はこういった機体があったのだ」という形で提示されたのが,RX-098であることは間違いないだろう。

 実際,ガンダム関連のMSの設定を見ると,こういった「遡りによる機体登録」は,かなり多く存在していたと考えざるを得ない。例えば,ガンダムMk-胸邵0号機やプロトタイプΖガンダムなどはその際足る例だろう。
 いずれも,後に実際の機体が誕生してから遡って命名,型式登録されたと考えると,命名の不都合や型式の疑問点が解消するのである。

(*9)

 この型式番号は,当然ながら連邦認可のナンバーとしての体裁を採っている。無論,拠点番号に09は存在しないため,このナンバーがダミーであることは見る人が見れば簡単に判ってしまう。
 だが,このナンバーが形式上とはいえ成立してしまっているところに,エゥーゴとしての政権掌握後のアナハイムのロビー活動の大きさが見て取れるのである。

(*10)

 おそらくだが,もう一つの理由として,UC0085/06/12に開発がスタートしていたG計画の遅延もリック・ディアスの積極的量産の理由の一つとなっていたと思われる。また,実際に量産機がロールアウトしたのは,UC0087とされるが,プロトタイプのロールアウト時期は不明となっている。これが,30バンチ事件直後あたりだと,急いで量産しなければならない状況にも説明がつくのである。

(*11)

 これは,当初配備されたのが腕のいいパイロットだったということを指しているだけである。また,位置的には陸戦ガンダム的な少数生産されたスペシャル機といったところだろう。

(*12)

 蛇足ながら,この時点でアナハイムは,ティターンズからも一定の評価を引き出すことが出来たとも言えるだろう。

(*13)

 MSの進化が爆発的に進んだことを除いても,である。

(*14)

 後述するが,ここで想定しているRX-81とは,後にプランニングされた方であり,初期のRX-78の完全量産型の方ではない。

(*15)

 近年の作品を例に判りやすく言えば,機動戦士ガンダムSEEDにおけるGAT-X105ストライクガンダムとGAT-01ストライクダガー,GAT-01A1ダガーの関係といえばいいだろう。ストライクガンダムが原型機(=ガンダム),ストライクダガーが簡易量産型(=ジム),105ダガーが量産型(=RX-81)という関係である。
 これは,戦後量産された機体が,原型機の量産型ではなく,簡易量産型の発展機であったという点でも共通している。(ちなみに,GAT-02L2ダガーLは,あくまでストライクダガーにストライカーパックシステムを追加した発展機という扱いである。)

(*16)

 実は元々の資料であるSD CLUBでは生産については言及されていないため,若干数存在した可能性も否定できないのである。
 (追記)この点は,PS3版機動戦士ガンダム戦記によって,なし崩し的に成立してしまった。また,設定が一部混沌としてきている為,場合によっては解釈そのものが変更されるかも知れない。

(*17)

 この発想自体はハイザックなどで既にあった物だが,他の機種で試されていないはずがない,ということからここで用いている。

(*18)

 考え方としては,RGM-79とRB-79の関係と同じである。
 MSA-002は,本文に述べたとおりであるが,MSA-003は,RMS-099の技術導入によって,全体的に強化したRGM-79といった機体といえるだろう。
 ただし,実際の運用での想定は,特殊任務向け配置と大規模戦向け配置で,機体の配備数が異なっていたと考えられる。

(*19)

 ここでは,近藤和久氏がかつてB-CLUBでイラストを描いたRMS-107とADVANCE OF Ζに登場したRX-107のコアモジュール(ロゼット)双方を想定している。

(*20)

 ここでいう高性能機とは,Ζや百式といったスペシャル機ではなく,小隊長など向けの「高性能量産機」の意味である。

(*21)

 とはいえ,エゥーゴには実質的にMSA-003とRMS-099以外の量産機は存在しない。
 また,派生機の多くもこれら2機種を基本的にベースとした物であり,これに比較的高評価を(結果的に)与えられたMSA-005系が加わっているに過ぎない。

(*22)

 すなわち,エゥーゴの主流であった技術はMS-09系技術の発展型だった,ということがメインテーマだったわけだ(^^;)

(*23)

 Ζ計画とG計画については,いずれネタにする予定である。

(*24)

 繰り返しになるが,ガンダムUCの結末が存在しない時期に纏められた文章である為,ラプラスの箱については記載されていない。
 が,大意は変更しなくてもいいだろう。

 ナビゲーション


 編集者


最終更新時間:2011年08月15日 17時31分09秒

脚注