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考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(4-9)の変更点

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!!!第2章 宇宙世紀の技術
 宇宙世紀の概要については,前章で簡単に説明を行った。本章では,これら時代時代に応じた技術的な面を概要と詳細の形でまとめていきたい。また,各陣営ごと,開発メーカーごとのMS開発に関する技術系譜等も本章で扱う。
 特に,宇宙世紀初期と記録の残る終盤である,200年代ではその世界環境が大きく異なるため,これらも含めて技術論という形でまとめておく。

 なお,各モビルスーツの詳細データ等,個別考察については第4章以降にまとめているので,そちらを参照してほしい。

!!2-4 モビルスーツの開発メーカー

 本項では,ジオン公国軍及び地球連邦軍におけるMSの開発メーカーについてその概要と詳細をまとめている。また,関連してMSの爆発的な進化が続いたグリプス戦役期頃までのMSの開発に関わった企業や組織等についてもまとめている。(企業ではなく,軍主導で開発が進められた機体群も存在するため,こういった表現になっている。)
 この時代,MSという機動兵器の基礎フォーマットが確立した時期ともいえ,以降のMS開発はこの成熟が続いていった時代と区別することが可能であり,それだけに様々なメーカーがその技術を競った時代だとも言えるのである。また,メーカーの違いはMSのコンセプトの違いとも言える時期であり,こうした時代を経て,MSという兵器は完成度が高められていったのであろう。そのため,この時代のMSは,初期にMSという兵器が登場した時期から,様々な用途別,機種別分類が確立するまで,非常に短期間で成熟しており,(一般的には兵器の成熟には非常に長時間がかかるものであるのだが)わずか20年ほどで第1〜第5世代まで急速に発展している。(ただし,基礎的フォーマットの確立は第2世代でなされており,以後の機種は多くがこの第2世代MSをベースとしているのは注目すべき点である。)

 第1節から第7節までは,これら一年戦争前後から第2次ネオ・ジオン戦争というMSが急速に発展した時代のMS開発メーカー,組織を重点的に解説している。また,宇宙世紀100年以降に登場したMS開発メーカーに関する概要や詳細については,代表的なものを第8節以降にまとめている。


!!2-4-(9) ブッホ・エアロダイナミクス

 ブッホ・エアロダイナミクスは,ロナ家により運営されるブッホ・コンツェルンの一企業で,MSなどの宇宙機動機器の開発を主に行っているメーカーである。
 実のところ,その歴史は古く,初代ロナ家当主シャルンホルスト・ブッホが宇宙世紀55年にコロニー開発に関わるデブリやジャンクの回収を行う企業として創業した「ブッホ・ジャンク・インク」にまでさかのぼることができる。この当時,宇宙開発に伴った様々な宇宙開発産業が誕生しており,ブッホ・ジャンク・インクもそうした企業の一つであったのである。無論,創業者たるシャルンホルストの先見の明があったことも間違いはないと考えられ,ブッホ・ジャンク・インクは,順調に業績をのばしていった。成長を続けたブッホ・ジャンク・インクは,ブッホ・コンツェルンとなり,わずかながらも地球圏に影響を与えられる企業にまでなっていたのである(*1)。(蛇足ながら,この13年後にシャルンホルストは旧欧州の名家ロナ家の家名を金で購入するほどになっている。)
 この当時,他の宇宙開発企業がどちらかといえば利益優先型の経営(代表的な企業としてアナハイム社があがるのは必然であろうが)を行っていたが,ブッホ・コンツェルンはこの当時から将来を見越した活動を行っていた。
 まず,宇宙世紀81年3月14日には,利益の公共還元を謳い,職業訓練校を設立している。この職業訓練校は,宇宙移民者の中でも起こりつつあった所得格差による低所得者や一年戦争後のコロニー再開発などに対応した軍からの復員者等を対象にしたもので,その運営資金はブッホ・コンツェルンから供出されており,訓練生にとって大きな金銭的負担を求められなかったこともあり,ブッホ・コンツェルンに対する企業評価の向上に大きな効果があった(*2)。特に,訓練生のブッホ・コンツェルンに対する企業忠誠は向上し,卒業生の多くがブッホ・コンツェルン内企業へと就職し,さらに発展を続けるという好循環を繰り返していたのである。
 こうした企業背景もあり,連邦政府に対する影響力も徐々に大きくなってきたコンツェルンは,独自のコロニー開発を申請,これが許可されると古いタイプ(島1号型)ではあるが,独自のコロニーを建造した。このコロニーがブッホコロニーであり,宇宙世紀84年7月8日に完成したとされている。
 このコロニーは,コンツェルン独自のコロニーであり,宇宙世紀117年に一般開放されるまでは謎に包まれたコロニーであった。しかし逆に言えば,そういった状況であったが故にロナ家の思惑が進めやすかったという事情もあるのである。(この頃からロナ家は,独自の動きを始めるのだが,この点については第3章で語るためここでは省略する。)

 独自のコロニー開発を進めたコンツェルンは,グループ内企業の再編を行い,宇宙機動機の開発をブッホ・エアロダイナミクスが行うこととなったのである。
 ブッホ・エアロダイナミクスは,一年戦争後軍からの払い下げのMSから始まった作業用MSの流れのなかにおいて,独自のS開発を行っているメーカーの一つとして認識を持たれているメーカーであった。そして,宇宙世紀108年に発表された作業用小型MS「デッサ・タイプ」は,従前のMSの7割程度のサイズしかない小型機でありながら,非常に高性能な機体であり,各企業や連邦政府にも評価機として貸し出されるほどであった(*3)。

 以後のブッホ・エアロダイナミクスの顛末に関して記した資料は意外と少ない。
 クロスボーン・バンガードの蜂起に際して用いられたMSが,ブッホ・エアロダイナミクスの製造である「らしい」という記録のみなのである。一部業界誌(*4)では指摘されているが,先のデッサタイプは,コスモバビロニア建国戦争で用いられた「デナン・タイプ」MSに瓜二つであり,その機体構成もほとんど同じなのである。無論,他社がデナン・タイプをコピーした機体であるという可能性も完全には否定できないが,こういった大規模なMSを開発できるだけの企業や施設は限られており,その点からもブッホ・エアロダイナミクスの関与はほぼ間違いないと考えられるのである。

 また,宇宙世紀130年代に勃発した木星帝国との戦乱においても,表れたクロスボーン・バンガードの機体にブッホ・エアロダイナミクス社の開発したと思われる機体が存在していた。だが,既に各コロニーの独立の動きが表れ始めたこともあり,おそらくこの頃には「コロニー国家の一企業」へと変貌を遂げていたのだと考えられるのである(*5)。


!!註釈
 本文中の注釈である。
 記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。

!(*1)
 これはF91という後付作品の関係上,それ以前の作品では感じられないことだが,独自のコロニーの建造を認められるなど,ブッホ・コンツェルンが一定の政治力を持っていたことは間違いないだろう。

!(*2)
 金銭的負担の内容や,対象となる職業訓練生に関する記述は筆者の劇中描写や設定からの推察に過ぎない。しかし,クロスボーン・バンガードの忠誠が,純然たる組織忠誠(すなわち金銭面や,強権,あるいは利益供与といった形には見えない)であることから考えるに,それほど的外れではないと考えられる。

!(*3)
 このデッサ・タイプこそが後のクロスボーン・バンガードのMSの原型であるわけだが,既にアナハイム社の独占状態であった連邦軍の体質から,これを軍用に転用するという発想はなかった。
 この流れが,クロスボーンの蜂起の際に,連邦軍とクロスボーンのMSの間の大きな性能差となってしまうのである。

!(*4)
 ここで言う業界誌とは,B-CLUB誌上で連載されていた,MSジャーナルのことである。

!(*5)
 もう一つの要因として,ブッホ・コンツェルンそのものがロナ家の没落に伴って,事実上解体されたであろうと思われることがある。
 シェリンドン・ロナは,貴族ではあったが「コンツェルン関係者」ではないかのように見える。コスモバビロニアは,実質的に自滅ではあるが,それに伴った混乱で「ロナ家の所有していたもの」は,失われたと考えられるのである。

 クロスボーン・ガンダムにおいて,明らかにブッホ・エアロダイナミクス系の機体であるゾンド・ゲーの補修パーツが存在しないこと,また,オンモの補給の中にもそういった「クロスボーン系」のMSが存在しなかったことからも,ブッホ・エアロダイナミクスそのものが存在しなくなったか,あるいはベラと距離を置かざるを得ないほど企業としての状況が変化した,ということなのではないだろうか。

!!ナビゲーション
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!!編集者
*あさぎり
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