!!!第2章 宇宙世紀の技術  宇宙世紀の概要については,前章で簡単に説明を行った。本章では,これら時代時代に応じた技術的な面を概要と詳細の形でまとめていきたい。また,各陣営ごと,開発メーカーごとのMS開発に関する技術系譜等も本章で扱う。  特に,宇宙世紀初期と記録の残る終盤である,200年代ではその世界環境が大きく異なるため,これらも含めて技術論という形でまとめておく。  なお,各モビルスーツの詳細データ等,個別考察については第4章以降にまとめているので,そちらを参照してほしい。 !!2-4 モビルスーツの開発メーカー  本項では,ジオン公国軍及び地球連邦軍におけるMSの開発メーカーについてその概要と詳細をまとめている。また,関連してMSの爆発的な進化が続いたグリプス戦役期頃までのMSの開発に関わった企業や組織等についてもまとめている。(企業ではなく,軍主導で開発が進められた機体群も存在するため,こういった表現になっている。)  この時代,MSという機動兵器の基礎フォーマットが確立した時期ともいえ,以降のMS開発はこの成熟が続いていった時代と区別することが可能であり,それだけに様々なメーカーがその技術を競った時代だとも言えるのである。また,メーカーの違いはMSのコンセプトの違いとも言える時期であり,こうした時代を経て,MSという兵器は完成度が高められていったのであろう。そのため,この時代のMSは,初期にMSという兵器が登場した時期から,様々な用途別,機種別分類が確立するまで,非常に短期間で成熟しており,(一般的には兵器の成熟には非常に長時間がかかるものであるのだが)わずか20年ほどで第1〜第5世代まで急速に発展している。(ただし,基礎的フォーマットの確立は第2世代でなされており,以後の機種は多くがこの第2世代MSをベースとしているのは注目すべき点である。)  第1節から第7節までは,これら一年戦争前後から第2次ネオ・ジオン戦争というMSが急速に発展した時代のMS開発メーカー,組織を重点的に解説している。また,宇宙世紀100年以降に登場したMS開発メーカーに関する概要や詳細については,代表的なものを第8節以降にまとめている。 !!2-4-(4) MIP社  MIP社は,ジオニック社と並んで有名な軍需企業である。ジオニック社との新兵器開発コンペティションでプラン提示を行っていることからも,早くから公国での兵器開発企業としての評価は高かったことがわかる。特に宇宙機の高機動運用に関する技術に秀でており,既存の宇宙戦闘機を大きく凌駕するプランとして,MIP-X1というプランをコンペティションに提出している。  このMIP-X1は,コンペティションではジオニック社が提示したZi-XA3に敗れているが,プランそのものの評価は総じて高く,MSの開発を優先しながらもMIP-X1の研究開発も継続されたのである。この結果誕生した兵器がモビルアーマー(以下,MA)であり,既に劣勢となっていた公国軍が欲していた一騎当千の兵器というスタンスに合致したものであった。この結果,MIP社はMA-05ビグロ(この機体は実質的にMIP-X1の発展型である)の採用など数多くの採用実績があるのである。  なお,これらMAは,その運用から「決戦兵器」的印象の強い機体が多いのだが,実際に検証してみると,実のところ局地戦用の標準的な装備の機種が意外と多いのである。この点は,MAを評価する上で,重要なポイントである。  代表的なMAであるMA-05ビグロは,空間戦闘用MAとしては,既に完成した状態であるといっても過言ではなく,実際,あれだけの大規模な機体でありながら,一説には15機が生産されたとも言われている。(また,<資料[5]>には,本機をベースとした別種の機体が記録されており,実際には15機以上の機体が建造されていた可能性も否定できない。)  また,MAM-07グラブロは,このMA-05のデータを利用して開発された海戦用MAであり,基本設計そのものはMA-05と大差ないと言われている。このあたりが,MIP社の優れたところであり,MAの開発で他を大きく引き離していたことを示している。こういった点で言えば,MIP社のMA開発における功績は非常に大きなものであるが,MS開発の面ではそれほどメジャーな企業とは言えないのである。いや,厳密に言えば有名なMSがある(これは後述する)のだが,製造メーカーがMIP社であるということがあまり知られていないといった方が良いだろう。  逆に言えば,それだけMS開発におけるジオニック社とツィマット社の2社の名前が大きすぎると言うことなのであり,それだけ現在までに発見されている資料がその2社に偏っていいるということも言えるのである。 :MIP社のMS開発:  MIP社が開発したMSというのは,MSM-07ズゴックとその派生機,及びMSM-08ゾゴックとされている(*1)。これまで述べてきたように,ジオン軍のMS開発は,事実上ジオニック社の独占状況であったため,他のメーカーが食い込む余地がほとんど無かった。そのため,この分野に参入する為には何らかの手段が必要となっていたのである。先に示したツィマット社は,早い時期からそういった動きを明確にした企業であり,逆にMIP社はコンペではジオニック社に敗れたものの,一定の評価を得たことでMIP-X1の発展による参入を目指した。  当然,他のメーカーもただ手をこまねいていたわけではなく,様々な方法で軍需に食い込もうとしていただろう事は想像するに難くない。様々な分野で,様々な新兵器が提示され,試験され,ある物は受け入れられ(採用され),ある物は却下される,といった繰り返しであっただろう(*2)。  特にMSにおいては,ライセンス生産を行っていた企業は,そのノウハウをライセンス生産することで身につけていくこととなった。  現時点で,ライセンス生産を行っていたと明確に示されている企業は,MIP社とツィマット社であるが,これ以外にも(当然これらメーカーの下請けを含めて)参入した企業は存在するはずである(*3)。これらメーカーが,独自の機体を開発するためにはそれ以外の売りとなる部分が必要である。その点で水陸両用MSというのは,ニッチな分野であったことは間違いない。  ジオニック社はMS-06M(後のMSM-01)で水陸両用MSの開発をスタートさせたが,この機体は結果的に軍の要望に応えられる物ではなかった。その分野に真っ先に軍の要望に応える機体を投入したのはツィマット社である。ツィマット社は,MSM-02で一定の評価を得た後,MSM-03で実際に運用可能なMSを投入したのである。(MSM-03は,ツィマット社初の自社製制式採用機となった。)これと同様に,他のメーカーも水陸両用MSには参入していた可能性は高い。例えば,前項で述べたスゥイネン社などもジオニック社の子会社でありながら,独自開発できる技術を持っていたがために参入した,と考えられるのである。  MIP社も陸戦用/空間戦用MSでは,ジオニック社,ツィマット社に後れをとっていたため,水陸両用MSにまず参入したと考えられる。  もともと機動兵器に関しては,一定の技術力を持っていた企業であり,MA-05の技術流用によって誕生したMAM-07だけではなく,こういったMAの運用状況に近い形での運用が求められたMSであったこともあり,水陸両用MSは,都合が良かったのである。そして,さすがはジオニック社に敗れながらも高い評価を得たMIP-X1を開発した企業である。完成したMSM-07ズゴックは,水中戦等能力はもとより,陸戦能力ですらMS-06を上回ると言われる機体となったのである(*4)。  逆に言えば,この事実もジオニック社がMS-06に縛られていたが故に,他のメーカーの斬新な発想に追いつけていないことを示しているだろう。 :一年戦争後のMIP社:  一年戦争後のMIP社の顛末を記した資料は,実はほとんど存在していない。しかし,後の歴史をみるにMIP社もジオニック社同様解体されたものと考えられる。  残念ながら,解体されたとしてもその後の状況については,不明な点が多く断定はできないのだが,やはり,アナハイム・エレクトロニクスに吸収された部門もあったのではないかと推測される。数多くの従業員もアナハイム・エレクトロニクスに移籍したのではないだろうか。  この点は,新たな資料の発見を待ちたいところである。 !!註釈  本文中の注釈である。  記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。 !(*1)  多くの資料では,MSM-07ズゴックのみがMIP社の開発機とされている。  しかし,MSM-08ゾゴックの解説では,ズゴックの同型派生機とされているため,近年ではグレートメカニックのようにMSM-08ゾゴックをMIP社製とする資料も増えた。  また,一説にはMSM-10ゾックもそのMA的運用から開発はMIP社であったのではないかとされている。筆者的には,この意見は同意できるものであり,特にPS2ゲーム版のゾックは,その形状からしてMAと認定してもいいかのような機体である。 !(*2)  このあたりは,MS-IGLOOなどの描写から考えるに十分ある得るだろう。 !(*3)  でなければ,数千機に及ぶザクの生産は難しいだろう。 !(*4)  このMS-06を上回るという設定は,当初からあったが,水陸両用MSの特徴である海水による冷却システムがズゴックではどのレベルで搭載されているのかが不明である。  つまり,陸上での稼働時間がどのくらいなのかは,実はわかっていないということである。このあたりには注意が必要である。 !!資料 *資料[5]:MS-IGLOO 一年戦争秘録 / 黙示録0079 !!ナビゲーション *[[目次|GUNDAM WORLD ENCYCLOPEDIA Laboratory Report]] * << [[前項目|考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(4-3)]] ■■■■ [[後項目|考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(4-5)]] >> !!編集者 *あさぎり ---- {{lastmodified}}