トップ 一覧 Farm 検索 ヘルプ ログイン

考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(2)の変更点

  • 追加された行はこのように表示されます。
  • 削除された行はこのように表示されます。
!!!第2章 宇宙世紀の技術
 宇宙世紀の概要については,前章で簡単に説明を行った。本章では,これら時代時代に応じた技術的な面を概要と詳細の形でまとめていきたい。また,各陣営ごと,開発メーカーごとのMS開発に関する技術系譜等も本章で扱う。
 特に,宇宙世紀初期と記録の残る終盤である,200年代ではその世界環境が大きく異なるため,これらも含めて技術論という形でまとめておく。

 なお,各モビルスーツの詳細データ等,個別考察については第4章以降にまとめているので,そちらを参照してほしい。

!!2-2 モビルスーツの誕生

 モビルスーツ(以下,MS)とは,宇宙世紀(以下,本項では年号を示す場合に関しては,UCとする)70年代に開発された人型戦闘兵器のことである。従前の兵器体系を大きく覆す兵器として登場したMSは,人類史上初の大規模宇宙戦争となった一年戦争(ジオン独立戦争)において,大きくその存在価値を示した。

 MSという画期的な新兵器がジオン公国において誕生したのは,ジオン公国がサイド3というある種限定された特殊な環境にある国であったことが大きく影響しているのは間違いないだろう。
 開戦時,地球連邦に対してジオン公国の国力は30分の1にも満たないと言われており,一般的には連邦に対してジオン公国が開戦するメリットはないと考えられていた。これは当時の世相や国力を考えると当然のことであり,逆に言えばそれ故に開戦するためには国力の差を覆せるほどの強力な手段が必要とされていたのである。
 つまり,この国力の差がMSを生み出した土壌の一つであったのは間違いなく,実際,様々な文献の中には,MSの完成があったからこそギレン・ザビは,開戦に踏み切ったとも言われているほどである。

 MSは,基本的にはコロニー建設用のワークスーツから発展してきたという説が最も有力である。だが,一部には宇宙戦闘機に高機動用のブーストアームを装着した機体から発展したという説など異説も存在する。いずれにせよ「AMBAC」という機動手段を入手するための結果として「人型」の戦闘兵器が誕生した,という事実には変わりはなく,以後の人類の兵器概念を大きく塗り替えたのである。

 記録上でのMSは,ジオニック社とMIP社のコンペティションにおいて,ジオニック社のZi-XA3がMIP-X1を下し採用されたことからその系譜が誕生したとされる。このZi-XA3がMS-01として採用されたことがすべてのMSの出発点なのである。
 だが,年表において,このコンペティションがいつであったかという明確な資料は存在していない。近年発見された<資料[1]>において,このコンペティションに関わったジオニック社とMIP社の試作機(ただし,資料中ではこれがZi-XA3及びMIP-X1とは明言されていない点には注意が必要である)が掲載されているが,この資料に記載されている機体は「人型」というにはほど遠い形状であり,確認できる宇宙世紀年表におけるUC0070年5月の「公国軍,大型二足歩行機を実験」という項目の機体であるとは考えにくい(*1)。しかし,資料からこの機体がZi-XA3へと発展していく基礎的な機体となったことは間違いなく,こういった発想があった(*2)からこそ,ジオニック社がコンペティションを勝ち抜いたことに異論を挟む者はいないだろう。

 こうして,ジオン軍によって行われた次世代機動兵器のコンペティションにおいて,ジオニック社が勝利したことによって,次世代の機動兵器は「人型機動兵器」であることが確定したわけである。そしてUC0073年1月,新たな兵器カテゴリとして,「モビルスーツ」の名称を与えられた「新兵器」が,MS-01という形で世に登場したのである。
 なお,多くの年表資料において,MSという名称が発表されたのが,このMS-01の登録の際と言われている。しかし,一部ではこの時点では「モビルワーカー」といったレベルのものでしかなかったという説もあり,明らかになっていない部分も多い。
 実際,<資料[2]>に見られるMS-01(とされる機体)は,確かに後のMS-05といった機体に類する意匠は見られるのだが,他の資料の機体,例えば<資料[3]>のMS-03とされる機体などとは異なった機体にも見えるのである(*3)。

 筆者が推察するに,この資料の混乱は,MSという新たな兵器カテゴリの開発に伴い,記録に残らない(すなわち,型式に反映されなかった)数多くの改良があったためではないだろうか。つまり,二足機動兵器の基礎実験が行われたUC0070年5月から,Zi-XA3がMS-01という型式を与えられたUC0073年1月までおよそ3年もの年月が経過していることから,その間に様々な実験等があり,その都度「型式に残らない」暫定的な仕様が存在したのではないかと考えれるのである。
 機動兵器のコンペティションに提出された機体であるZi-XA3がMS-01という型式を与えられたのはこれまでの資料類に共通する記述である。しかし,ジオン軍のMS開発の経緯を見るに,Zi-XA3がコンペティションで勝利したからこそ人型機動兵器の開発がスタートしたことを考えると,このコンペティション自体がUC0070年5月あるいはそれ以前であると考えなければならない。要するに,MS-01は,その型式番号が与えられた時点で,すでに基礎研究が行われてから3年が経過していると考えられるのだ。
 つまり,Zi-XA3が勝利したコンペティションから3年の間に記録に残らない改良が数多く行われ,実用の機体としてある程度の目処がたった時点で,「MS-01」の型式が与えられたのではないかと考えられるのである。
 Zi-XA3という機体そのものは変更されているわけではなく,改修を加え続けた結果,原型機とは大幅に姿が変わってしまったのが実情ではないだろうか。

 これはMS-02〜04の開発経緯を見ても想像することができる。
 宇宙世紀年表を確認すると,MS-01が軍に登録されたのは,UC0073年1月である。しかし,UC0073年4月にはジオニック社は各下請け会社にMS-04(の試作機)の開発を依頼しているのである。(この下請け中の1社,「ホシオカ重機」がMS-04の開発に関わった際の顛末は,書籍として刊行されている(*4)ので参照のこと。<資料[4]>)
 つまり,MS-01の登録からわずか3ヶ月後には既にMS-04が発注されているということになるのである。ホシオカ重機が開発試作機を完成させた日付の正式なデータは存在していないが,少なくとも開発依頼がホシオカに出されたUC0073年4月時点で既にMS-04の基本設計自体は終了しているということは言えるであろう。
 つまり,MS-01として登録されたZi-XA3が基礎研究用の機体であったならば,後に実用配備機として量産されるMS-05のプロトタイプ機として完成したMS-04がわずか3ヶ月で設計完了するとは考えられないのである。(もちろん,その間にMS-02,MS-03という2機種が存在していなければならないということも含めて,である。)
 そして,記録に残るMS開発史を見る限り,MS-02やMS-03の開発における改修点は明確に記録が残っており,実際にテストと改修が繰り返されたことは,間違いないと考えられるのである(*5)。

 このように考えると,Zi-XA3のジオン軍納入に際して,ジオニック社は軍の要求する仕様変更を行い(これにおよそ3年必要だったと考えられる),ある程度の実用化の目処がたった時点で,制式にMS-01として「ナンバリングと同時に納入」されたのではないだろうか。
 そして,MS-01をベースに改良を加えた状態で順次仕様ナンバーが与えられ,最終的なMS-03の改良点が明確化した時点で,改めてMS-04として機体の新規建造がスタートしたと考えられるのである。

 事実,いくつかの資料で確認できるのだが,MS-01を機動性を重視して改修された機体がMS-02であり,このMS-02の構造的問題点の改修が行われた機体がMS-03であるという記録がある。少なくともこれらのナンバーは同一機の仕様違いである。これと同様に,Zi-XA3そのものもMS-01として登録されるまでの間にかなりの改修が加えられていたとしてもおかしくはないだろう。
 つまり,現在確認できる様々な資料間で確認できるZi-XA3(MS-01)等の意匠が多少なりとも異なっていたとしても,単に撮影された時期の違いによるもので,いずれもキャプションとして間違っていない可能性がある,という事なのである。

 蛇足ながら,MS-01〜03に関しては,同一機の改修であることはほぼ間違いないが,MS-04は,実際に工業製品として量産を視野にいれた設計であったことは間違いない。
 これについては,次節で語ることとしよう。

!!註釈
 本文中の注釈である。
 記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。

!(*1) 〜考えにくい
 どう考えてもMS大全集で提示されたジオニック社の機体は「人型」とは言い難い形状であり,後述するファクトファイルのMS-01とは似ても似つかない。すなわち,Zi-XA3とは考えにくいだけではなく,コンペティション投入機といえるかどうかの問題点も残るのである。
 実際,資料中では「公国軍による次期主力汎用戦術兵器の選考以前にZEONIC社が試作していたAMBACシステム採用の機動兵器。」という記載であり,コンペティション機ではないことは明らかなのだが,ここでZi-X3という機体をデザインせずに,こういった機体をデザインしてきた意図に関しては不明なままである。
 一方で,MIP社製の機体は,後のMA-05に近い形状であり,MIP-X1の直接系譜に当たる機体である可能性は高い。

 ぶっちゃけた話,資料を作成した松浦氏がそこまで考えていたかは疑問であるが……。

!(*2)
 実は,これ以前にこういった人型の機動兵器が存在していたという説がある。
 X-91/XC-91 XC(ザク)という機体がそれで,この機体が先のジオニック社の機体のコンセプトベースになった,という論説も一部には存在しているのである。
 なお,X-91/XC-91については,Wiki内のMSデータを参照のこと。

!(*3)
 本来,設定を読み解いた形で考察すると,MS-01〜03は,同一の機体を改修によって型式変更した物である。(簡単に言えば,仕様変更による型式変更。)
 MS-02とMS-03の間の変更に関しては,別機である可能性も否定は出来ないが,解説文からは同一機としたほうが無難ではあろう。
 しかしながら,本文で示した様にMS-01は,その時点で「モビルワーカー」といったレベルの代物でしかない,という解釈も存在する。これは,ガンダム・ジ・オリジンでの描写であり,ガンダムエース2009年10月号に付録としてついてきたMSコレクションでは,どう見ても別機体であるMS-01〜03が掲載されている。
 このことから,流れとしてはこの双方を並立せざるをえず,微妙にぼかした形で解説するしかなかった。

!(*4)
 資料[4]として提示した「デベロッパーズ」は,公式とはされていない作品だが,MS開発史において非常に重要な記載が多い。
 そのため,本書においては,ほぼ公式に準じた扱いを行っている。(なお,MS大全集では,M-MSVのMS-04のパイロットに,デベロッパーズの主人公である「ミオン・ホシオカ」が記述されているなど,ほぼメディアワークス的には公式扱いしているようだ。)

(*5)
 これについては,MSVの各種資料やGUNDAM OFFICIALS などで確認することができる。
 いずれの資料でもMS-01〜MS-03が別の機体であるという解釈も可能であるし,本論のように改修機であるとの解釈も可能である。
 実は,筆者の考えは,その双方を並立させる「複数のMS-01が納入され,それぞれが独自の改良を加えられた」というものである。
 つまり,MS-01のベースとなるZi-X3は,その姿共通だが,MS-01として納入された機体は複数存在し,「結果的にMS-04に連なった機体」が,MS-01〜MS-03のナンバーを与えられた,と考えるものである。

!!資料
*資料[1]:MS大全集2003
*資料[2]:GUNDAM FACT FILE 1
*資料[3]:GUNDAM OFFICIALS
*資料[4]:Developers

!!ナビゲーション
*[[目次|GUNDAM WORLD ENCYCLOPEDIA Laboratory Report]]
* << [[前項目|考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(1)]] ■■■■ [[後項目|考察:Laboratory Report/第2章 宇宙世紀の技術(3)]] >>

!!編集者
*あさぎり
----
{{lastmodified}}