!!!第1章 宇宙世紀概要  1979年に放映が始まったテレビアニメーション「機動戦士ガンダム(以下,ファーストガンダム)」は,日本におけるアニメーション史上に画期的な作品の一つとなった。それには様々な理由があるが,いずれの理由も「ガンダムがヒットした理由」にはなり得るであろう。  逆に言えば,こういった様々な理由が複合的に重なった結果,「ガンダム」という作品は今日まで続く長期シリーズとなったと言えるだろう。本章では,最初に放映されたファーストガンダムが用いていた架空の暦「宇宙世紀」に関して時代ごとの概要をまとめている。  なお,以降の本文と註釈で執筆のスタンスが違うので注意していただきたい。(本文は,宇宙世紀の遙か未来に生きる人間として,注釈は我々「ガンダムという作品を見ている者」としてのスタンスでまとめている。) (red:概要は,PDF版では章頭にのみ記載されるが,Wiki項目では説明の為に各小節ごとに掲載している。) !!1-9 コスモバビロニア建国戦争  宇宙世紀0120年に起こった「オールズモビル事変」は,連邦軍にとってはジオンの亡霊を見たかのような事件であった(*1)。だが,この事件には隠されたもう一つの側面があった。すなわち「コスモバビロニア建国戦争」への布石である。  宇宙世紀0123年3月16日,突如としてサイド4,フロンティアサイドに謎の軍が侵攻した。侵攻軍のMSは,これまで開発されてきたどの勢力のMSとも異なったものであり,その性能は高かった。そして,駐留していた連邦軍のMSを完膚無きまでにたたきつぶしたのである。  この勢力こそ,クロスボーン・バンガードを名乗る組織であり,彼らが目指したのは,彼らの手によるコロニーの地球連邦からの完全独立であった。そして,クロスボーン・バンガードは,ロナ家によって用いられる私兵であり,彼らが目指す国家は「コスモバビロニア」と呼ばれるものであった。  コスモバビロニアは,ロナ家を中心とした「貴族」によって統治され,完全なる階級構造を持った国家として建国されようとしていた。ロナ家が目指したのは,統治者には統治者の,兵士には兵士の,そして民衆には民衆の義務を課すもので,お互いがお互いを補完するかのような仕組みによって成り立っていた。  これは一見理想的な支配とも思えるが,実のところ非常に危険な思想である。  この思想では,統治者の理念が末端まで行き渡っている場合,非常に理想的な組織として機能する。だが,誰かが野望を持った時点でこれが崩壊してしまうのである。  つまり,こういった組織では,常に己は己の役割「のみ」を実践することを求められる。すなわち,人員は常に歯車でなければならないのである。つまり,統治者は基本的に統治者であり,兵士は統治者になることはできないということである。また,兵士もそれを指揮する貴族と一般の兵士に別れているが,基本的に能力のある者が貴族となることはあっても,兵士という枠からは外に出ることは無い事を意味している。  こういった歯車は,きちんと噛み合って回っている間は理想的な作業を行うことができる。しかし,どれか一つの歯車が噛み合わなくなった瞬間に崩壊してしまうのである。  実際,コスモバビロニアもこうした一部の綻びから崩壊に向かうこととなった。そして,宇宙世紀127年にロナ家の一員であったベラ・ロナの貴族主義の否定(*2)により,コスモバビロニアは完全に崩壊しているのである。  しかし,この戦争が残した意義は大きい。  これ以降,各サイドあるいはコロニー単位での独立運動が盛んになるのである。しかも,この頃になると地球連邦政府は,完全に麻痺状態となっており,そのため,これらの動きを止めるだけの力は既になかった。無論,各コロニーは,こういった状況を理解していたが故に独自の動きを見せ始めたのである。  そして,宇宙世紀0133年の木星帝国戦争,そして同136年の木星帝国残党による神の雷計画によって連邦政府は完全にその力を失い,以後,コロニー間の独自の活動が地球圏の中心的な動きへとなっていくのであった。 !!註釈  本文中の注釈である。  記述スタンスは,基本的に「執筆者の視点」ではなく,「(我々)編集者/閲覧者の視点」で行われている。 !(*1)  オールズモビル動乱は,宇宙世紀0120年に起こった火星圏での蜂起は,そのほとんどの人員が旧ジオン軍,旧ネオ・ジオン軍に関係する人々だった。これは,構成していた人員の多くが,既に老齢を迎えている人々ばかりであった。例えば,鹵獲したF90を運用したボッシュなどは第2次ネオ・ジオン戦争でネオ・ジオン側のMSパイロットだった人材である。  こうした人材ばかりであり,火星における戦闘で,オリンポスキャノンによる作戦が失敗したことで,そのほとんどが,爆散する基地とともに姿を消している。  ところが,宇宙世紀0122〜3年の第2次動乱は,実のところクロスボーン・バンガードにそそのかされた人々によるものであった。若い人材で,かつてのジオンシンパ(言葉を換えれば,ジオンかぶれ)の人々をクロスボーンが裏から利用した,というのが第2次動乱の真相である。  また,第1次動乱,第2次動乱含めて言えることだが,この動乱に際して,実はコロニー側の動きは鈍い状況であり,既にジオンという名称は「過去の物」でしかなかったということなのである。  この影響をもたらしたのは,やはりU.C.0096のラプラス憲章の公開で,これがあったからこそ各サイドは「自らの足場固め」を進めていたと考えられる。 (*2)  ベラ・ロナによる貴族主義の否定は,「機動戦士クロスボーン・ガンダム」で初めて表現され,ゲーム「クライマックスUC」でその年月が年表という形で提示されている。  実際,「機動戦士ガンダムF91」の続編として計画されていた作品では,こういった流れが想定されていたとも言われている。(クロスボーン・ガンダムは,この点が前提となって物語が構成されている。)  この流れは,実のところ劇場版F91でもその一端を見る事ができる。それは,ザビーネの「成り上がり」である。元々マイッツァーの貴族主義に対する疑問的な言葉をザビーネは,何度か口にしている。これは,兵士としての歯車を既に逸脱した物であり,ザビーネは,ベラを利用して,成り上がる事を考えていたと想定できる。こういった点からも既に貴族主義が崩壊していたことがわかるだろう。  ザビーネの行動は,その後のジレ殺害などを含めて,貴族主義というシステムに対する根本的な否定であると考えられる。  ところが,機動戦士クロスボーン・ガンダムでは,ザビーネはベラを首班とした貴族主義に固執しているかの様にみえる。この点の(一見すると)不整合に見える部分は如何にして起きたか考えると,「ザビーネが考える貴族主義」と「マイッツァーが考える貴族主義」の根本が異なっていた,ということなのであろう。  後者は,あくまで人類の支配大系として理想的なシステムとして「人に歯車を強要する」ものであったが,前者は「野望の実現の為の階層構造」でしか無かったのであろう。  実際,ロナ家という名目が存在すれば,コスモバビロニアでは(頂点は目指さなくても)貴族という上流階級に位置づけられることは可能である。それどころか,ベラのコントロールが可能であれば,実質的な支配者であることも不可能ではないのだ。  どうもザビーネの行動には,そうした支配者たらんとする野望が見え隠れしているような気がする。 !!ナビゲーション *[[目次|GUNDAM WORLD ENCYCLOPEDIA Laboratory Report]] * << [[前項目|考察:Laboratory Report/第1章 宇宙世紀概要(8)]] ■■■■ [[後項目|考察:Laboratory Report/第1章 宇宙世紀概要(10)]] >> !!編集者 *あさぎり ---- {{lastmodified}}