!!!考察:ギャプラン改は本当にオーガスタ研の機体か? *[考察] !!前書き ゲーム「SDガンダムGジェネレーションF」に登場したMAK-005S ギャプラン改という機体は,オーガスタ研が開発を進めた機体であるという。 しかし,同時に解説などを参照すると,Zプラスや同じオーガスタ研のギャプランが配備された結果,この機体の計画は実現していないとされているのである。 コスト面の問題があるならまだしも,実質的にギャプランとほぼ同じ機体構造であり,本来カラバが必要としていた用途,すなわちインターセプターとしての用途ならば,ギャプラン改の方がそのスペック的には上とも思われるのだが,それが実現していないということは,何らかの阻害要因があったからに他ならない。 では,その阻害要因とは何だろうか。 「[[新説/珍説ブチ上げまShow]]」の後継企画らしく,暴論をブチあげてみたいと思う。 なお,本論は,一研究者的な立場で記述している。 現時点では,その編集に微妙な揺らぎがあるため,今ひとつ精度が低い文章になっているが,その辺りは整理していきたいと考えている。 感想などは下記コメント欄や掲示板などでお願いしたいと思う。 !!本論 !1.MAK-005S 開発に至る時勢の流れ [[MAK-005S ギャプラン改|〔MAK-005S〕ギャプラン改]]は,カラバが開発を進めていたMAである。 グリプス戦役は,ティターンズとエゥーゴ間の戦争といったニュアンスで受け取られる戦乱であるが,見方を変えると連邦軍内部の勢力争いによる内乱である。その片方に旧ジオン系の組織が協力していた,といった形であったというのが真相であろう。{{fn  アクシズの帰還により,三つどもえの戦乱となった後は,エゥーゴがかろうじて戦乱に勝利した物の,その組織自体は事実上瓦解状態であったとも言われており,実際,エゥーゴに所属していた旧ジオン兵(かつてのザビ家側勢力であった者)は続々とエゥーゴから離脱し,アクシズ(ネオジオン)に合流していたのである。}} この戦乱において大きなターニングポイントとなったのが,エゥーゴの指導者であるブレックス・フォーラ准将からすべてを託されたクワトロ・バジーナ大尉(シャア・アズナブル)によって行われたダカール宣言である。 このダカール宣言以降,地球上の勢力分布図は大きく書き換わることとなった。 エゥーゴという組織は,連邦内部での立場を一気に正規軍へと移し,ティターンズは反乱軍という立場になった。これは,エゥーゴ,すなわち「反地球連邦組織」という名称とは相容れない立場になったと言うことである。 実際に,この宣言以降旧ジオン系の反連邦主義者は次々とエゥーゴを離脱していっている。また,本来ならばジオン残党狩りが主任務であるはずのティターンズとすら共闘するような事例ですら確認されるようになったのである。{{fn  これは月面都市イプシロン襲撃事件などが該当する事例である。イプシロン事件は,一般的にはティターンズ側のMSの襲撃と受け取られているが,実際にはエゥーゴ内部の反連邦勢力過激派が起こした事件であるという説もあるのである。}} この勢力分布図の移り変わりは,連邦系の各研究施設も同様であり,それまでティターンズ側についていた施設も軒並みエゥーゴ/カラバ側へとその支持を変えていったのである。 特に,ティターンズに積極的に協力していた各研究施設に取ってみれば,この宣言以降,自分たちも反連邦勢力として認定されたに等しく,さりとて,ティターンズが自らを守ってくれる可能性もほとんど無いため,事実上死刑先行を下されたに等しかった。 そのため,これらのティターンズ系研究施設は,他の連邦系施設よりも積極的にエゥーゴやカラバに対して技術協力を申し出たのである。 一般的には,本機,MAK-005S ギャプラン改は,ティターンズ側に協力していたオーガスタ研が,連邦側へとその支持を転換する際に,開発が進められていた各種機体と共に提供されたORX-005 ギャプランのデータが参考となって開発が進められた機体であるとされている。 しかし,この説に対して,一部では公然と反論が提示されているのである。曰く「本機は,親ティターンズ派から離脱した連邦系技術者が開発を進めていた機体をベースにした機体である」というものである。 実は,筆者もこの説に共感しており,ここに本説を提示するに至ったのである。 !2.MAK-005Sの開発コンセプト MAK-005Sの機体設計は,大気圏上層部でのインターセプターとしての運用のみに用途を絞って再設計したものであり,ORX-005のMAモードを基本にMSモードへの変形を省略し,MSモードの脚部にブースターを設置したものである。また,武装を大幅に追加しており,いわば高々度戦闘機のMA版といった機体として設計が行われたものなのである。 この時代に至っても,大気圏上層における邀撃任務は,高々度戦闘機によって行われることが多かった。大気圏突入による急襲に対しては,宇宙側からの対応は,Zタイプが配備されることで,あるいは,同じくバリュートを装備したMS部隊によって対応が可能ではあったが,地上からの対応は,高々度戦闘機に頼らざるをえなかったのである。 しかし,ガルダ級の配備が進むにつれ,この用途に新たな可能性が出てきた。それが,ガルダ級を中心とした邀撃部隊の編成である。 ガルダ級は高々度を長時間飛行可能ないわば空中空母である。そのため,離発着をガルダ級から行い,邀撃任務のみに専念するインターセプターをガルダ級に配備する,すなわち打撃力に欠ける{{fn  爆発的に進化したMSの装甲に対して,高々度戦闘機の持つミサイルはともかく,機銃などでは対応が難しかったのもまた事実である}}高々度戦闘機に代わって,ビーム兵器を持つTMSやMAを配備しようという動きがでてきたのである。 一般的に,高々度戦闘機は一度の出撃で攻撃チャンスは限られ,任務に失敗した場合は,即帰還しなければならない。しかし,ガルダ級を母機とする場合,搭載プロペラントが少ないTMSやMAでも充分こういった任務に対応できるのである。 すなわち,ギャプラン改は,こういった用途向けに開発が進められた機体なのである。 それでいて,機体構造自体はORX-005とさほど変わらないため,生産ラインも転用がきき,さらにパーツ共用度も比較的高いため,生産コストの上昇も抑えられると考えられ,特定用途向けの機体としては,いわば理想的な機体として誕生するはずだったのである。 !3.なぜ採用されなかったのか? 前項までにギャプラン改のコンセプトなどを簡単にまとめてみた。繰り返しになるが,ガルダ級を保有するに至ったカラバとしては,ギャプラン改は理想的な邀撃機になるはずのMAであった。 実際,カラバは邀撃任務に対応できる機体を様々開発/採用している。 後に特務部隊まで編成されたMSK-006 Zプラスを筆頭に,MSZ-006-3 Zガンダム3型仕様{{fn  一般的には,Zガンダム3号機といわれる機体である。006-3仕様は,本来ブースターまで含めたインターセプター形態のことである}},ORX-005 ギャプラン,NRX-044 アッシマー{{fn  この機体については,ティターンズに採用されていた量産機体が,ダカール宣言後,カラバ/エゥーゴでの使用もあったという可能性について言及したものである}},FF-08WR ワイバーン{{fn  この機体も,SENTINELにおけるSガンダム/Zプラスの採用が,カラバ系からという前提の元での可能性論である}},といった機体群がカラバで用いられた機体である。 しかし,実際にカラバの中心部隊であったアウドムラ隊に配備されたのは,ZプラスやネモといったTMSやMSといった機体であり,他のカラバ部隊に配備された機体にもギャプランは確認できるが,このギャプラン改は確認できないのである。 無論,各種資料を調査すると,このギャプラン改はあくまで開発段階で中止となった機体であり,実機は存在しない(一般的に見られる機体は,シミュレーション映像だと言われている)とされており,配備されているわけはないのだが,ここに疑問点があるのである。 すなわち,邀撃任務に関して言えば,おそらくオリジナルのギャプラン以上に適任{{fn  邀撃任務における攻撃力で言えばギャプラン以上である。引き替えに,近接戦闘能力は皆無となる。}}であるギャプラン改が,何故採用されなかったのか,と言うことなのである。 特に,資料を改めると,「20機ほど生産された」という記述にも行き当たり,この点からすると,実際に運用されていた可能性も否定は出来ないのだが,ギャプラン改による邀撃部隊としての運用については,未だきちんとした資料が存在しないのである。 先に示したように,ギャプラン改は,ギャプランの生産ラインが転用でき,(高コストのZプラスの配備においてカラバの財政が苦しかったとしても)コスト面での問題点は殆ど存在しないといえるのである。 しかも,ギャプランが配備されていることを考えると,計画だけの機体で配備されていないということは考えにくいのである。{{fn  ギャプランを配備した部隊が,格闘戦能力を要求した,と考えれば有る程度納得は行くが,そうであっても比較的簡単に生産できるはずの機体が,全く生産されていないという点に疑問点は残る。また,先の20機程生産されたという記述が事実としても,運用記録が残らない点には疑問を投げかけざるを得ない。}} さて,ここで気になってくるのが,先に提示した「本機は,親ティターンズ派から離脱した連邦系技術者が開発を進めていた機体をベースにした機体である」という説なのである。すなわち,ギャプラン改とギャプランは,実は全く別のルートでカラバに提示された機体であったと考えてみるのである。 そうすると,ギャプランが採用され,ギャプラン改が採用されなかった理由を探っていくことが可能になるのである。 第1項に提示したように,ティターンズ系の各研究施設は,その身の保全のためにエゥーゴ/カラバに取り入ることを積極的に行っていた。そのために考えられる最も適当な方法は,自分たちの持っている技術を提供することである。さらにいえば,(多少強引であっても,)自分たちの開発した技術が採用されたならば,その立場はより安定したものになることは間違いないだろう。 つまり,ギャプランとギャプラン改が別のルートで提示された機体ならば,その機体の採用を恐れたオーガスタ研が,より提供しやすい条件{{fn  例えば,アナハイムがティターンズにマラサイを無償供与したように,オーガスタ研もギャプランを邀撃用にパッケージングしてカラバに無償で提供した可能性はどうだろうか?}}でカラバに対してギャプランを提供し,ギャプラン改の建造/配備を阻害した,という考え方もできるのである。 筆者はこれまで各種資料を調査してきたいるが,その中に実はこのギャプラン改に相当する可能性のある機体が存在することがわかっているのである。 オーガスタ研は,旧アメリカ合衆国ジョージア州クラークヒル湖畔にあったニュータイプ技術研究所ということであり,早くからティターンズに協力関係にあったとされている。 しかし,ギャプランを始めとする各種機体の開発においては,オークランドの技術陣と協力体制に有ったことはすでに既知の事実である。 このことから考えるに,このオークランド研以外の研究施設とも人的交流が有ったことは間違いないと思われるのである。すなわち,この人的交流を行った技術者のいずれかからデータが漏れる可能性は否定できないのである。{{fn  当時は,アクシズにORX-013の技術が漏れるなど,技術漏洩はかなりあったためだが……}} さらに,ORX-005という機体は,オーガスタ研(オークランド研)以外の研究施設でも独自の改良が進められていたという事実もあるのだ。 この事実は,一部資料{{fn  つまりは,サイバーコミック掲載ということだ(^^;)}}にのみ確認できるものであり,認知している研究者が少ない。しかも掲載されている資料が,極めてマイナーな資料であり,かつ,非公式な内容を含む資料であることから,殆ど研究者の間では顧みられることの無かったものなのである。 しかしながら,この一連の資料の中から,これまでの定説を覆し,今日の定説となった事実{{fn  これは,サイバーコミックに連載されていたガンダムF90などを始めとする今日では公式/準公式として扱われる作品群のことを示している。}}も発見されていることから,無下に否定してしまうのはやはりもったいないと思うのだ。 「地球連邦軍戦術兵器開発部第3研究所」,旧イングランド領に存在したこの技術研究所では,独自にORX-005の改良を行っていたとされている。しかも,この研究所そのものは,関連する第5研究所とともに,ティターンズに対しては批判的な研究所であったのだ。 資料によれば,技術開発陣の一人が,このORX-005の改良機の開発を進めており,ティターンズへの納入を控えていた,とされている。 しかし,その技術者がティターンズ兵に襲撃されるという事件が起こったらしいのである。幸いにして,技術者は基地所属の連邦兵によって救われており,命は助かっている。だが,この事件から考えるにその後ティターンズ側にその機体の納入計画が実際に行われたとは考えにくいのである。 残念ながら,資料はこの部分までの事実記載のみで終わっており,その後の状況については確認できない。だが,こういった研究所が実際に存在し,ORX-005の開発に関わっていた,という点が確認できるだけでも大きな情報ではないだろうか。 さらに,この第3研究所が開発を進めていた機体は,コードとして「ORX-005S 機体名ギャプランS」というコードが与えられていたとされるのである。 一方,ギャプラン改の型式は,MAK-005Sである。この,MAKは,エゥーゴ/カラバの型式コードに準じたナンバリングである。MAは,モビルアーマーを表し,Kは,カラバの制式コードである。では,「005S」は,何から取られたのであろうか? 単純に5番目のモビルアーマーと考えてもいいのだが,エゥーゴ/カラバ系の機体にモビルアーマーは,TMS/TMAを除けば,実のところ確認できるのは本機だけなのである。となると,この005Sとは,旧来の型式を引き継いだものと考えた方がいいだろう。実際,MSK-006やMSK-100Sなどと言った旧来の型式を引き継いだナンバーが,カラバには散見できるのである。 どうだろうか,ここに奇妙な符合を見ることができると思えないだろうか。 筆者が考えるに,このMAK-005S ギャプラン改という機体は,ティターンズに納入を強要されていた戦術兵器開発部の技術者が,カラバに持ち込んだ「ORX-005S ギャプランS」をベースに開発が進められていた機体こそが,プランニングされた「MAK-005S ギャプラン改」ではないかと考えるのである。 さて,さらに考えを進めてみよう。 この資料{{fn  つまりは,サイバーコミック011掲載の「機動戦士Zガンダム ユーロ・サーカス」である。}}において,明確に季節を示す資料は無い。だが,「ティターンズが各研究所に機体や技術納入を求めていた」点と,「それに対して(反感を持っていたが)有る程度従わなければならなかった」点を考慮すると,この事件はティターンズがその権力を持っていた時点,すなわちダカール宣言以前のことだと考えなければならいだろう。 このように考えると,この事件の直後,カラバに持ち込まれたMAK-005Sの計画が進んでいた最中にダカール宣言があり,これにより慌てたオーガスタ研が,組織の安泰を目指すために,カラバ/エゥーゴに対して保有していたギャプランを無償,あるいはそれに準ずる状態で提供した,という事態が考えられ,カラバ/エゥーゴとしては,開発を進めていたギャプラン系の機体が入手できたため,MAK-005Sの計画を中止した,という可能性が想定できるのである。 !最後に 本説は非常に少ない資料から導き出した推論に過ぎないが,現在確認できる資料から考え得るベターな解釈だと思われる。 エゥーゴ/カラバというグリプス戦役〜第1次ネオジオン戦争時の組織は,その成立もはっきりした資料があるわけでもなく,また,崩壊の過程についても推論と一部資料によって確認できるに過ぎない。それだけに,運用していた機体群についても(連邦としての運用機もあったため)非常にはっきりしない部分が多いのである。 この時期は,MSという新体系の兵器が試行錯誤をつづけているという時期であり,様々な試作兵器が歴史上に登場した時期でもある。それだけに,運用されなかった機体や計画だけの機体といった「通常ならば表に出てきにくい」レアケースの機体も数多く戦場に登場していたり,資料として残っていたりするのである。 本機,ギャプラン改もそういった機体のひとつとして資料が残っていたため,歴史シミュレーションゲーム{{fn  SDガンダムGジェネレーションFのことだが,いわゆる平成3部作,∀ガンダムについては考慮していないスタンスを取っている。}}などで使用可能な機体として登場しているのであろう。 他の研究者からはまた別の意見が登場することは充分考えられるが,歴史上の謎に対するひとつの論説として見ていただければ幸いである。 //''<< U.C.0223 サイド6/Ex-Laboratory刊行[UC技術年鑑 UC050〜0100]に収録されたアーサー・M・ギリ執筆,MAK-005Sの項を抜粋 >>'' !!脚注 {{footnote_list}} !!編集者 *あさぎり ---- !!履歴 *2006/04/14:初稿脱稿 *2006/10/25:生産数について修正,誤字脱字の修正 //最終更新履歴ではなく編者の編集履歴を ---- *む〜ん(--)。おいらは手持ち資料がないのがつらい(T_T)。 - だっちん (2006年04月14日 22時46分52秒) {{comment}} ---- {{lastmodified}}