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考察:インパルスシステムは,効率的か?

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考察:インパルスシステムは,効率的か?

  • [考察]

 前書き

新説/珍説ブチ上げまShow」という形で,これまで展開していた考察関連をWiki上で展開するための項目が「考察:○○」という項目になります。
この項目は基本的に編者が,独自の論説を展開したものに対してつけられたコメント等をもとにさらなる考察を展開するための項目として設置されたものです。
編者が異なれば,違った考察になることも充分あり得ますし,複数の編者の意見によってまとまっていくこともあり得ます。
従って,同じ考察でも様々な編者が項目を立てる可能性もあります。
項目編集者の方々は,特段凝り固まった考察ではなく,単に「このように考えている」といった程度のものでも作成してかまいません。
Wikiの利点として,考察内の用語がリンクされるということもあり,参照がたやすくなると思われます。積極的に遊びましょう!

なお,編集権限をもたない方は,下記コメント欄を利用ください。

 導入

機動戦士ガンダムSEED DESTINYの前半における主役モビルスーツであるZGMF-X56S インパルスには,「インパルスシステム」と呼ばれる特徴的なシステムが搭載されている。
ところがこのシステム,放映開始前からその存在に疑問符が呈されるようなものであった。
ここでは,このインパルスシステムを「前向きに」考察し,実際に有効である(あるいは,有効であるためには)ことを考えていきたいと思う。

 本論

1.インパルスシステムの概要

セカンドステージMSシリーズとして開発されたZGMF-X56S インパルスは,他のMSとは決定的に異なったシステムを採用している。それがこのインパルスシステムである。

インパルスシステムとは,MSの機体を分割し,上半身であるチェストフライヤーと下半身であるレッグフライヤーとして独立したユニットとし,これにコントロールユニットであるコアスプレンダーをドッキングさせることで,ひとつのMSとして運用させるというものである。

2.「インパルス」という機体

X56S インパルスの含まれるセカンドステージMSシリーズは,本来は局地戦MSを開発するというコンセプトのシリーズである。しかし,インパルスはセカンドステージMSシリーズが目指していたMSとしては,少々異質なコンセプトの機体である。
この機体は,セカンドステージMSというよりは,前大戦時に連合側が開発したGAT-X105 ストライクのシステムを参考にした機体,といった方がいいのである。

インパルスは,連合がシステム化したX105(あるいは,GAT-01A1 ダガー)とFX-550 スカイグラスパーの連携システムを単機でパッケージングして運用しようというコンセプトにより設計されている機体である。
この発想は,前大戦以後ユニウス条約によってMSの保有制限が課せられた両陣営にとって,必然的に導入されてきたシステム,すなわち,連合側のストライカーシステム,ザフト側のウィザードシステムの発展的システムであり,局地戦対応機というよりも全領域汎用機といったほうがいいものなのである。
しかし,シルエットフライヤーによる単機運用までパッケージングしたとはいえ,その基本システムはウィザードシステムと変わるところが無く,セカンドステージMSとしては特筆すべき点は見受けられないのもまた事実である。

しかし,ここに「インパルスシステム」が加わったことで,インパルスは機体として特徴的な機体となっているのである。

3.インパルスシステムは効率的なシステムか?

一般的に「インパルスシステム」というとX56S インパルス本体とシルエットシステムを考えてしまいがちであるが,本来ならば,MS運用母艦であるミネルバまでも含めたものを指すと言えるだろう。

このことを前提に考慮すると,CE73においては,インパルスシステムは効率的なシステムとは言いがたいだろう。
まず,最大の問題点は,MS運用のためにわざわざ新型艦艇まで設計建造されているという点である。これは,コスト面だけではなく,部隊運用面において大きな問題点となる。
前大戦時に運用されていたMSや艦艇は,CE世界における部隊運用の開始時期から考えても,耐用年数に達していないものが殆どのはずである。[1]MSにおいては,近代化兵装を行うことで,長期間の運用に耐えうる機体へとアップデートすることは可能であるが,艦艇というものは元々が「長期運用を前提とした」兵装であるという点が最大の足かせであるのだ。

むろん,艦艇の近代化改装というものも頻繁に行われるものではある。だが,MSの運用システムなど,抜本的な部分というのは,あくまで艦艇がベースに考えられるものなのである。
連合側の艦艇は,元々がMAを基準に考慮されていたものであり,MS戦が中心となった前大戦中期以降,続々とMS戦対応の艦艇へと改修作業が行われていった。
しかし,それらの艦艇を見てもらうと判るように,元々がMSとの連携を前提として建造されたアークエンジェル級と比較するとどうしても非効率な部分や後付け的な部分が目立ってしまうのである。

特にザフトの艦艇は,元々がMSとの運用を前提としたシステムで成り立っている艦艇である。すなわち,この時点でMSの運用形態がほぼ固定されてしまうため,新たに開発されるMSもこの運用形態に縛られてしまうのである。
実際,ザクを始めとするニューミレニアムシリーズは,この旧来の艦艇での運用も何ら問題なく行うことが出来る。
これは,MSを「搭載できる」という点だけではなく,メンテナンスや補給なども含めて,旧来のMS運用の枠内に収まった機体であるという事の証明に他ならないのである。[2]
実のところ,セカンドステージMSにおいてもインパルスを除いた他の機体は,「デュートリオン送電システムを除けば」この旧来のMS運用の枠からはみ出していないのである。[3]

さて,ここで改めてインパルスシステムを考えてみると,明らかに旧来のMS運用システムから逸脱した存在なのである。
インパルスシステムは,専用母艦を必要とする時点で,既に旧来のMS運用システムから逸脱しており,CE73においては非効率きわまりないのである。

第1の理由として,インパルスという機体そのものが高価である点があげられる。
インパルスは,機体の分割運用のために統合兵装コントロールユニットとしてコアスプレンダーが用意されている。そのため,あの小さな機体に様々な技術が投入されており,それだけにコストがはね上がっているのである。
システム的に考えれば,この機体だけでも通常のMS並みのコストが必要だと思われるため,かなりの機能的(あるいは性能的)優位がなければ,こういった機体が量産されるとは考えにくいのである。
実際,コアスプレンダーは,4機の建造とされており,通常試作機は少なくとも数ダース分のユニットが建造され,運用テストも複数機で行うことを考えると,完成した機体の数は少ないと言える。

第2の理由として,MSの運用に技術面でのハードルが高いことがあげられる。
ザフトでは,旧来のMS運用のためのパイロット育成マニュアルは存在するが,インパルスのような新型兵装に対するパイロット育成マニュアルは存在していない。
従って,インパルスを運用するパイロットは,技能として一般的なパイロットよりも高いハードルが要求されるのである。[4]
仮に,インパルスが大量導入されても,パイロットの育成には時間がかかるだろう。

第3の理由として,新型艦艇の存在があげられる。
インパルスは運用母艦としてミネルバという艦艇の存在が必須とされる。
新造艦の設計,建造には膨大なコストがかかる上,そのクルーの育成にも時間とコストが必要となってしまう。
これは停戦期間中とはいえ,戦闘行為の再開は時間の問題であるCE73という時代においては,かなり非効率的である。こういった時間をかけるならば,既存の艦で運用でき,なおかつ強力な新型MSを開発した方がよほど効率的なのである。
実際,デスティニーやレジェンドと言った新型機は,インパルスシステムの機体ではなく,ザクと大差ない運用を行われており,最終決戦時にはその所在をメサイアに移しても,そのまま運用することが可能であった。しかし,インパルスの場合,運用拠点はミネルバから移すことは不可能なのである。

これらの事柄から,インパルスシステムは,「効率的なシステム」には,このCE73時点ではなり得なかったのである。

4.インパルスシステムの理想

では,インパルスシステムが効率的なシステムであり得るのはどういった状態であるだろうか。

これはすなわち,「すべてのMSがインパルスシステムとなったとき」に他ならない。
インパルスシステムは,機体コア,すなわちコアスプレンダーさえ無事ならば,チェスト/レッグフライヤーを換装することで直ちに戦線に復帰が可能なシステムなのである。

つまり,すべてのMSがこのシステムを採用していたならば,運用艦もすべてインパルスシステム対応艦であり,「どのMSが戦場で損壊しても,コアさえ無事ならば,いずれかの艦から,ただちに新たなユニットを供給されることで戦闘を維持することが可能」であることを意味している。
また,弾薬,推進剤などについてもチェスト/レッグフライヤー及びシルエットの換装により,補給が可能なのである。MSの動力源であるバッテリーは,デュートリオン送電システムによって補給が可能であることを考えると,インパルスシステムによる部隊構成はMS運用にとってメリットが大きいことがわかる。

逆に運用中に,パイロット側に何らかのトラブル(例えば,被弾によるダメージ,疲労,最悪の場合は戦死)が生じた場合,被弾したユニットを切り離し,離脱することも可能である。また,仮に戦死した場合でも無事なユニットが有れば,他のMSが必要とした際に,運用することも可能となるだろう。

このように考えていくと,「すべての機体がインパルスシステムの採用機」だった場合は,その運用には大きな可能性がある。

すなわちインパルスシステムは,前大戦時にザフトが試作したZGMF-X11A リジェネレイトのコンセプトに近いと言えないだろうか?
X11A リジェネレイトは,システム上巨大なユニットとなってしまったが,X56S インパルスは,通常のMSサイズにこれをおさめることに成功しているのである。
つまり,X56S インパルスは,X11A リジェネレイトの換装システムと,GAT-X105のストライカーシステム[5],双方のシステムを発展採用した機体と言えないこともないのである。

だが,残念ながらこのシステムはコスト面で大きな負担を強いるものとなってしまった。そのため,コアスプレンダーも4機しか建造されていない。
これではこの画期的なシステム搭載機も単なる高額な分離合体式MSに過ぎないのである。
蛇足ながら,ミネルバという新造艦に通常MSの運用システム(しかも当初からザクの運用が前提)を備えていることからしても,事実上インパルスシステムは,既に失敗しているといっても過言ではないだろう。

 編集者


 履歴

  • 2006/04/25:脱稿

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最終更新時間:2006年04月25日 19時36分45秒

脚注

  • [1] 現実の兵装としての戦闘機などの運用年数を見てもらうと,この点は理解してもらえると思う。
  • [2] 無論,運用する艦艇側にも多少のアップデートが行われているだろう事は,否定しない。むしろ,その方が兵器運用としては妥当である。これらのアップデートが行われていない艦艇は,旧来のMSの改修型であるゲイツRを運用していたと考えると問題の解決にはなるだろう。
  • [3] これは,奪取されたセカンドステージMSが,連合側で難なく運用されていた点から考えても間違いないだろう。連合のMS運用システムというのは,いわばザフトのデッドコピーである。そのため,艦艇運用などと併せて,この奪取されたガイア,カオス,アビスは,旧来の枠から逸脱しない運用が行われたのであろう。
  • [4] 劇中描画が弱すぎるため,こういった印象は殆ど残らないのだが,シンは赤服であり,ザフトパイロットの中でもエリートにあたる。また,レイやルナマリアと異なり,シンの場合は,多分にテストパイロット的な要素も強いのである。レイやルナマリアがザクという「一般的に用いられる機体」のカスタムカラーであるのに対して,インパルスは「機体自体がスペシャル」なのである。実は,この違いはかなり大きいのである。
  • [5] ザフト側でいえば,ZGMF-X12A テスタメントのシステム。