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運河
説明
月面トレンチ・シティ上部を流れる運河のこと。
月の赤道上に建造されているが，その基礎となったのは，旧世界の巨大な粒子加速器の痕跡である。この粒子加速器の痕跡に都市が建造され，その上部を覆う様に造られたのが，運河なのである。
総延長10915キロ，幅はそれぞれ九百メートルの2本が流れており，赤道に沿って月を一周している。この運河の下に，基本的にすべての月面都市は造られており，一部の大都市はさらに運河の周囲部にも拡張した都市設備を持ち，宇宙港や工場設備をそうした運河の外に配置している場合もある。運河は，こうした各都市間の連絡橋としての役割ももっている。
総延長の二十パーセントがくり抜いた岩盤の下を通っており，残り八十パーセントは採光用の透明チューブに覆われて，月面上に直接露出している。透明素材で形成された運河は採光窓でもあり，下から見上げれば，巨大な水槽ごしに太陽を望む幻想的な光景になって，地下都市に地球の昼と変わらない光を届けている。また，夜の時間帯には，素材の光透過率が変化し，夜のとばりが都市に訪れる。
50メートルの水深を持つ河の水は，魚の養殖に用いられるばかりでなく，太陽光線から有害な要素を取り除くフィルターの役も果たしている。
灼熱の昼と極寒の夜を一週間単位でくり返す月にあって，都市内の気温を一定に保つ触媒としても利用されており，暑い昼側には夜側で冷やされた水を，寒い夜側には昼側で温められた水を環流させて，植物の生育に必要な季節の変化をも再現していた。
運河の水に塩分が含まれているのは，トレンチ・シティ建築のため，月面に落下させた木星の衛星軌道から運ばれた資源小惑星の含有する氷が，もともと海水に近い成分を有していたためだとされている。この結果，地球の海に似た生態系が構築され，ムーンレィスの貴重な食料庫として機能するようになった。その一方で，苔や貝類が河底に付着し，地下都市の採光窓としての役目に支障をきたすことにもなったため，苔掃除と呼ばれる作業が常に必要となった。
運河には，漁船に混じって複数の潜水艇が係留されており，船体に複数の可動式モップを備えたこれら潜水艇は，月面を一周する長大な運河をたえず回航して，河底の掃除を行っている。
居住区
運河人の居住する各都市は20パーセントを占める岩盤をくりぬいた地域に建造されている。これは，月面上に建造され直接強い太陽光を浴びるによって発生する各種障害を防ぐためでである。
こうした拠点となる港（都市）に対して，月面上の運河は「沖」と呼ばれており，一般の漁師は太陽光を直接浴びる月面上への出航は禁じられているが，運河清掃用潜水艦だけは例外であった。
無論，多くの場合，沖に出たから命の危険がある，というわけではなく，あくまでもこうしたことが伝わってきている，という状況である。
関連項目
編集者
最終更新時間：2017年11月29日 21時13分28秒
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脚注