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ガレージキット / ガレキ
- [模型用語]
説明
大手メーカーによる一般流通商品以外のキットのこと。ガレキとも。
大半は,無発泡ウレタン(プラキャスト[1],レジンキャスト)製の組立式のものがだが,近年は塩ビ(PVC)製の完成品モデルがその主流になりつつあり,本来の意味の「キット」とはかけ離れつつある。
元来ガレージキットととは,個人レベルで製作した作品を複製するものを指した,そのため,ガレージで製作するという意味からガレージキットと呼ばれるようになった。しかし,現在では大きなマーケットを形成しており,この点でも当初の意味合いは薄れてきている。(ガレージキットとして生産されたインジェクションキットまで存在するが,現在はこうしたインジェクションキットに主眼をシフトしたメーカーも多く,コトブキヤなどは既にガレージキットとは見なされなくなってきている。)
国内でガレージキットが認知され始めたのは,1970年代末頃で,特撮怪獣などの複製販売から始まっている。80年代に入ると,海洋堂,ボークスなどの大手模型店が独自に開発した商品を販売し始めており,また同時期にゼネラルプロダクツもガレージキット販売を行っていたことから,各種媒体にこうした商品の存在が広がっていったのだった。
90年代に入ると,様々な「ガレージキットメーカー」が登場し,模型分野では「当たり前の空気」を形成したのである。
実のところ,こうした複製技術は絶版キットの入手などで,古くからトライされていたもので,これが自作した完成品を複製する,という方向性に変化したのは必然とも言える状況なのである。
海外の場合,プラモデルそのものが子どものホビーという側面もありながら,腕のある大人の趣味といった面もあったこともあり,早くからバキュームフォームなどによる簡易キットが数多くのメーカーから発売されていた。ところが,国内の場合,大人の趣味という方向性よりは,「子どものオモチャ」の延長線上でしか無く,プラモデルも「大人になったら卒業する遊び」でしか無かったのである。このため,こうした造形的な面でのこだわりをもったモデラー達が台頭してくるまでかなりの時間を要することとなった。つまり,60年代にあった最初のプラモデルブームを経験した年齢層が,ある程度の年齢になるまで「趣味」としてのプラモデル製作は,なかなか定着しなかったのである。
70年代になると,再びプラモデルのブームが起こる。この時期には,カーモデルが全般的にブームを担っていたが,第2次怪獣ブームの時期でもあり,造形技術を蓄えた人たちが台頭してきた時期でもあるのである。これが,花開いたのが80年代であり,おりからのガンプラブームとも相まって,ガレージキットという新しい製品もまた定着していくのである。(ガンプラでは,改造が大きなウェイトを占めており,パーツの複製は長く求められていた技法のひとつであったこともあり,低年齢層にまで複製技術が広まったひとつのきっかけとなった。[2])
もともとこうした複製技術の広まりと,初期のガレージキットが怪獣造形などであったという経緯もあって,国内でのガレージキットは,ニッチな商品であると共に「誰が原型を製作したか」に注目が集まりやすい状況となった。怪獣造形などは,原型を製作した人の癖やアレンジが出やすい分野であり,買い手側も原型師のアレンジによって選ぶことも多かったのである。
ところが,当時の複製技術では,複製は取れても完成度はそれほど高くなく,結局モデラーの腕に完成度は左右される状況であった。これに対して,今度はガレージキットを提供していた模型店側もさらに精密な複製の可能な素材の開発にまで手を付けるようになったのである。
大手メーカー側も,ニッチな商品をこうした少数で提供できるガレージキット的手法を利用する場合も生じ(例えばバンダイのニューキャストモデルなどその一例だろう),マスプロダクツモデルとガレージキットという棲み分けが成立したのである。
80年代末になると,同人誌即売会(コミケ)の様な形で,ガレージキットの即売会である「ワンダーフェスティバル」が定着する。これは,ゼネラルプロダクツが主催したイベントであり,ガレージキットで最大の問題とされた版権も「当日のみ」という条件でクリアされるという画期的なもので,このシステムは主催が海洋堂に変更となっても,基本的に継続している。(無論,許諾されない版権も存在する。)
こうした状況から,徐々にガレージキットの認知が進んだのだが,これを決定づけたのが,95年の「新世紀エヴァンゲリオン」の放映である。
エヴァンゲリオンは,当初大手メーカーから商品化されず,商品は全てガレージキットメーカーからの発売ということになってしまっており,これがきっかけで,模型ユーザーの中でもマニアックな分野だったガレージキットが,アニメファンや一般のエヴァファンにまで広まったのである。
この結果,ガレージキットで有りながら,大手メーカーの製品並みに販売量が増加したことと,キットを組む技量を持たない層に提供することを前提とした「完成品」がその販売量の多くを占めるように変化していったのである。
その後,美少女フィギュアブームが到来するのだが,この時期になると,既に完成品が当然の様な状況となっており,「キット」はほとんど姿を消してしまっていた。
これらの状況から,かつてのガレージキットメーカーは,既に一種のホビーメーカーでしかなくなっており,ガレージキットという言葉が事実上の死語と化している現状がある。(実際,コトブキヤなどは既にひとつの「インジェクションキットメーカー」である。)
こうした時勢の変化になぞらえ,本来の意味でのガレージキットを「狭義」のガレージキットとして再定義する考え方も根強い。
ガレージキットの商品種別と権利問題
ガレージキットには,その考え方から商品種別に大きく3つのパターンが存在する。
一つ目は,市販の商品が全く存在しない為,一から自作した造形物を複製したものである。ニッチな機体や,キャラクタなどが製品化される場合は,これに相当する。
二つ目は,市販の商品の不満点を改称する為の「改造パーツ」として用意されるものである。多くは,市販のプラモデル類のパーツとコンバートして用いる物で,航空機などの場合,キット化されていないバリエーションを再現する為のパーツがガレージキット化されることもある。
最後は,様々な諸問題から製品化できないモノをガレージキット化するものである。映画の特定の俳優が演じたキャラなどは,肖像権などがからみ簡単に製品化することはできないが,自作した物を複製すること自体は問題ではない。これを販売する事は問題であるが,配布するなどの方法で,頒布した事例もあり,こうした考え方は,絶版キットの複製をとり,製作するといった考え方にも通じるものである。(当然ながら,商業的なものではないということになる。)
いずれのパターンでも,造形の対象となるものに制限はなく,実在の車輛や機体,兵器などから,キャラクターモデルまで幅広く造形の対象となる。[3]
実際,ガレージキットとして頒布されるもののなかには,キャラクタが身につけいてたバッヂなども存在しており,非常に対象となる領域は広いのである。
もちろん,いずれのパターンでも本来は,版権が大きく影響してくる。(三番目のみ,黙認されるレベルと言うだけでしかない。)
同人誌即売会(コミケ)が,古くから黙認されてきた理由のひとつに,ファン活動と商売は別物という考え方があり,権利者側も「絵が違う(似てない)」などといった理由で,これを黙認していた空気がある。(90年代に起こったポケモン問題[4]の様に,どうしても問題となる場合はあるが,基本的には,「黙認」が継続しているのである。)
ところが,ガレージキットの場合,「元に似せる為の商品」であるため,どうしても版権問題からは逃れられない。初期のガレージキットには,無版権のものも多く,こうした現状の問題点を解決する為の手段としてワンダーフェスティバルは当日版権制を実現したのである。この制度に問題が無いわけではないが,こうした努力が実を結び,現在ではガレージキットメーカーにも版権が許諾されやすくなってきている。
しかし,こうした状況の反面,かつて存在した様な個人事業者などのガレージキットメーカーには版権が逆に許諾されにくくなっており,また,海外製の海賊製品の横行もあって,版権元の制限は小規模メーカーには厳しくなる方向性にある。
なお,航空機や自動車などといったものは,原則として玩具としての意匠権が存在しないため,自由に製作することができる(実際,かつては例えば自動車であれば製造メーカーに連絡するだけで良かったといった事例もある)が,近年では「権利ビジネス」という新たな概念のビジネスの登場で,全てにロイヤルティが生じる事態となっている。
例えば,A社の自動車を模型化するメーカーが,他社に同じ車種を模型化させない為に「独占商品化権」といった契約を行い,それに見合った金額を支払うことで,他社に製品化させない,といった事例も生じている。(この場合,あくまでも商品化なので,自作したり無償配布する分には問題ない。)同様に車のデザインを意匠登録するといった事例もあり,近年はこうした権利登録をひとつひとつ確認しなければならないという問題点も多い。
特に,これらの権利を管理することでロイヤルティを稼ごうとする権利ゴロの様な企業も存在しており,こうした企業によって様々な「新しい権利」が誕生する為,キャラクターの立体化を行うよりも,実際の自動車や飛行機などを立体化する方が苦労することも多い。
商品形態
ガレージキットの商品形態は,大手メーカーの販売する製品と変わるところはない。
そのため,インジェクションによるプラモデルから,いわゆるガレージキット然としたキャストキットまで多種多様である。
そのため,それぞれの種別に関しては別項を参照のこと。
- バキュームフォームキット
- メタルキット
- レジンキャストキット
- ソフトビニールキット
- 簡易インジェクションキット
ガレージキットという「名称」
ガレージキットという名称は,元々海外での小規模メーカーなどを表す言葉からきているが,これを大きく用いていたのが,ゼネラルプロダクツ(現在のガイナックス)であった。
80年代初めには,海洋堂など様々な模型店がガレージキット販売に乗り出していたが,ゼネラルプロダクツは,版権の許諾などの点で一歩進んでいる状態だったのである。
このため,「ガレージキット」という名称自体にも危機感があり,これを避けて独自の名称で呼称するショップも現れていた。
多くは,「キャストキット」,「キャストモデル」といった用語であったが,材質である「キャスト」そのものが「プラキャスト」という商標であった点から,これを避けようとするメーカーもあったのである。
海洋堂は,「アートプラ」という名称を定着させようとしていた。これは,ガレージキットは,原型師による造形の複製であり,アートだという考え方があったものだが,定着するには至らなかった。
バンダイ出版課が独自に展開したガレージキットは,「ニューキャストモデル」という商品名で発売された。[5]
しかし,いずれも定着せず,結果的にガレージキットという言葉そのものも現在は死語的な位置づけになってきている。
備考
模型に関する用語の集約の為,ガンダムに関連しないもの,関連しないメーカーも含まれています。
関連項目
編集者
[模型用語]
最終更新時間:2011年03月13日 21時00分32秒
ノート
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脚注